新田浩之さん

インタビュー&構成:徳橋功
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Hiroshi Nitta
ライター

 

 

 

無駄な知識こそ、人生を豊かにすると信じています。

 

 

 

“これから自分の名前で勝負する人々”へのインタビューシリーズ「MET Executives」。1人目の中国出身ビジネスパーソン・馬思琦さんに続きご紹介するのは、ある地域に鬼くわしいライター、新田浩之さんです。

これまで私たちMy Eyes Tokyoは、都内で新田さんと2回イベントを開催しました。昨年(2017年)8月末に開催した『バルチック・ナイト~出会い、語り、食べ、遊ぶ』、そして今年(2018年)8月末に開催した『東欧ロシア鉄分ナイト〜六本木発東ベルリン行き赤い矢号〜』。兵庫県神戸市在住の新田さんはいずれの会にも飛行機で上京し参加、バルト三国で見聞きしたことや東欧諸国およびロシアを通る鉄道乗車体験について熱く語りました。

私たちが新田さんとタッグを組んだのは、彼の“偏愛ぶり”に惹かれたから。「自分は世界を股にかける“国際人”ではない」と言い切る新田さんのその根拠として、これまでに訪れた国々の地図を見せてくれました。

修学旅行などで行ったという韓国やマレーシア以外、自らの意思でその地を踏んだのは、ほぼ中央ヨーロッパ東ヨーロッパ、およびロシア。そんな彼の見事なまでの偏りぶりに私たちは魅了され、イベント共催を決めました。

今回のインタビューでは、彼の地に新田さんが抱く強い愛の源泉と、その魅力を伝えるという“容易ならざる活動”の原動力に迫ります。

*インタビュー@Facebook Messenger

 

中東欧は日本の“先輩”

私がライターとして数多く執筆しているテーマは、大学や大学院で学んできた中東欧やロシア地域の文化や歴史、そして鉄道です。私は、もともと文章を書くことが好きでした。様々な表現方法がある中で、自分が興味あることを一番手っ取り早く伝えられる方法が、私にとっては文章だったと思います。

執筆テーマである中東欧やロシア – 多くの日本人にとってまだ馴染みが薄いと思われるこれらの場所に私が惹かれるのは、今後日本が直面すると思われる課題を解決するためのヒントを見つけられるのではないか、と考えるからです。例えば最近、日本でも湧き上がっている多文化共生。これについては20年以上も前、多民族国家だった旧ユーゴスラビアで内戦が起き分裂したという失敗例があります。私たちはそこから民族共生の難しさを学びながら、どのように難題に取り組み、解決すべきかを思案できます。

多くの人は、ポーランドやチェコなど、1つの国に興味を持ち、深く調べていくと思います。もちろんそれは否定しません。ただ中東欧は、様々な民族や歴史が何層にも重なる“パイ生地”のようなもの。だから私は1国だけでなく、地域全体を満遍なく見たいのです。10数か国それぞれを深く研究する必要があるので、確かに大変。でも“狭く深く”ではなく“広く深く”が私のモットーなので、それらをテーマに記事を書くのは、私にとって苦しくも充実した作業です。

 

“ライフワーク”が“ライスワーク”に変わる瞬間

私が中東欧に惹かれたのは、高校1年生の頃。世界史、特に近現代史が好きだった私は、学校から渡された集英社の書籍パンフレットで『プラハの春』(春江一也著)という小説を発見。現代史をベースにしているせいか、貪るように読みました。

その後10代の終わりごろにNHKスペシャル『映像の世紀』を見て、ユーゴスラビアに強い関心を抱き、大学と大学院では第二次大戦に関するユーゴスラビアの歴史政策を研究。ただし、ユーゴスラビア1国だけでは全容がつかめないため、ソ連を含めた旧東側諸国にも関心を持ちました。その間の2009年、大学3回生の頃に遂に中東欧の地を踏みました。

中東欧の文化や歴史の研究に熱中する一方、“生活のために働かなくてはならない”という現実に直面。就職活動の時期を迎えた私は、特に業界を絞らず様々な企業の面接を受けました。その末に地元のメーカーに内定し、大学院修士課程修了後は営業マンとして入社。それでも中東欧ロシアには、仕事をしながら何らかの形で関わり続けようと思っていました。しかし諸事情により退社を余儀なくされ、約2年勤務した後その会社を去りました。

退職した時は特にライターになろうという気持ちは無く、それよりも「学生時代に周り切れなかった中東欧諸国を訪問したい」という思いの方が強かったですね。でもただ旅するだけではもったいないので、その記録を残そうと思い、ブログ『TABI-PROG』を立ち上げました。そして実際に3か月かけてポーランド~スロバキア~オーストリア~チェコ~ドイツ~スロベニア~ハンガリー~セルビア~ボスニア~クロアチア~モンテネグロ~ルーマニア~モルドバ~ウクライナを周り、その足跡を綴っていきました。それが私のライター活動の原点と言えるかもしれません。

 

“鉄道”と“中東欧ロシア”は好相性

初めに申したように、中東欧以外に鉄道についても執筆しています。鉄道は国内外問わず好きで、幼い頃からの趣味です。

中東欧と鉄道には、ある共通項があります。それは“一見同じように見えて、実は一つ一つが少しずつ違う”ということ。中東欧は、多くの日本人にとって一括りにされがちな地域ですが、それぞれに“少しずつ”異なる文化や歴史があります。この”少しずつ“が私にとって大事なことなのです。鉄道についても、同じ鉄道会社の車両でも前面が“少しずつ”違っていたりします。それが好きなんですね。逆に言えば、“少しずつ違う”という特色が自分にとって顕著に見えたのが中東欧であり、鉄道だった – だから好きになったように思います。

しかも鉄道は、四方を海に囲まれた日本だと路線が国内に留まる一方、大陸なら国境を越えて伸びています。中東欧ロシア地域も例外ではなく、国同士が鉄道で結ばれている。“広く深く”がモットーの私にとって、鉄道が各国についての研究を深める良い題材となっています。


My Eyes Tokyoが新田さんとコラボして開催したトークイベント『東欧ロシア鉄分ナイト〜六本木発東ベルリン行き赤い矢号〜』。ドイツやロシア、ベラルーシ、ウクライナ、ハンガリー、モルドバなどを結ぶ鉄道の乗車レポートを聞くマニアックな会にも関わらず、たくさんの人たちが詰めかけた。
2018年8月31日@妙善寺(東京都港区)*撮影:土渕正則

鉄道好きとしては、ウラジオストク~モスクワ間をシベリア鉄道で走破したい。さらに今もなお未踏の地であるアルバニア、コソボ(セルビア共和国コソボ・メトヒヤ自治州)、ブルガリア、マケドニアも訪ねてみたいですね。

 

“無駄の伝道師”を目指す

ライターとして独立して約2年。運命に流されるようにして選んだこの道ですが、少しずつ掲載媒体も増え、『マイナビニュース』などの有名メディアでも執筆するようになりました。ただライターとしての力量は、まだまだです。ライティングスキルや表現力をさらに伸ばすことが、今後の課題です。

一方で、今年“チェコ親善アンバサダー2018”に就任したということもあり「私自身をメディア化したい」という思いが生まれました。具体的には、書くだけに留まらず“話す”ことへの挑戦や、積極的なイベント開催、そして私のブログ『TABI-PROG』のさらなる充実です。私が愛して止まない中東欧の文化や歴史、および国内外の鉄道、もしくはそれ以外のテーマも、あらゆる場で、あらゆる表現手段を通じて伝えていきたいです。

もし、今までの文章を読んで「私と一緒に何かしたい」という人がいらしたら、大歓迎。ぜひ、ご連絡ください(笑)。

 

私は「無駄な知識こそ、人生を豊かにする」と信じています。今後も“無駄の伝道師”として、日常では全く役に立たない、でも誰かの人生を豊かにするかもしれない情報を、より多くの人たちに伝えていきます。

 

新田さん関連リンク

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