ライル・ウォーレンさん(オーストラリア)
インタビュー&構成:徳橋功
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Lyle Warren
ホームステイ運営会社 代表
(2002年来日)
僕が物件探しをしていた時「外国人お断り」の文字を見つけてしまいました。
オーストラリアから来た素敵な男性をご紹介します。彼は来日して4年(*2006年当時)、毎日懸命に仕事をしています。ホームステイ会社の経営、日本人ビジネスマン向け英語講師、そして子供向けの科学の先生など、ひとつの場所に留まることなく、日々東京中を駆け回っています。もしかしたら今、この瞬間も皆さんの街にいるかもしれませんよ!(笑)
*インタビュー@三軒茶屋(世田谷区)
英語版はこちらから
「日本的生活様式」って?
僕は昔、交換留学生としてアメリカの大学に留学しました。オーストラリアからアメリカに向かう途中、そしてアメリカから帰国する途中、僕は日本に立ち寄りました。アメリカにいた頃、日本から来た人たちとたくさん友達になって、彼らが日本のことをたくさん教えてくれました。それで日本のポップカルチャーや音楽、マンガに興味を持ち、やがて日本そのものに関心を抱きました。
アメリカでの留学を終えオーストラリアに戻って大学を修了しました。僕はその後アメリカで仕事をしようと思っていました。しかし留学中にニューヨークで同時多発テロが起きたため、アメリカ行きを断念しました。経済状況は非常に悪く、職を失った人が続出したアメリカに、両親は僕を行かせたくなかったのです。
そこで僕は日本に行くことを考えました。まずは日本で半年間のワーキングホリデーに行き、そこで日本を体験することにしました。実際に日本に行って、日本がすごく好きになりました。だからオーストラリアに帰国後、ワーキングビザを得て日本に戻ってきました。
そのような経緯で日本に来てから4年経ちました。そんな今でも「日本的生活様式」というのが何なのか分からないんですよね。その意味が分からない。日本人の友達がたくさんいますが、生活スタイルは人それぞれです。彼らは僕のオーストラリア人の友達と似た生活を送っていますよ。人はそれぞれ違うから、ひとくくりでは表現しにくいと思います。
電車が耐えらえない
日本では、小さなエリアに人がたくさん住んでいます。だから全てが小さく見えます。食べ物の量はオーストラリアよりも全然少ないから、そういうのは慣れなければいけないですね。
混雑した電車は嫌ですね・・・シドニーではそういう電車に乗ったことがないから、もう2度と乗りたくないくらい。特に僕が郊外に住んでいた時は、もう大変でした。だから都内に引っ越そうと思いました。あのような電車に20分とか25分も乗るのは、もう勘弁してほしいです。ぎゅうぎゅう詰めの人混みの中に閉じ込められているわけですから。駅に着いて電車から吐き出されている全ての人たちが、日々そういう体験をしているとしたら、僕は信じられない。これが人々の抑うつの原因になっているのではないかと思ってしまいます。僕はもう二度とそんな電車には乗らないですけどね。
外国人お断り
もう一つ日本で好きではないものといえば、アパートです。外国人お断りの物件がすごく多いです。制度化された強い差別のように感じます。オーストラリア人にとってこれは衝撃的事実です。
僕が渋谷で物件探しをしている時でした。その不動産には「ペット可」「エアコン有り」のように物件を分類するカテゴリーが書いてありました。そのカテゴリーに、何と「外国人入居可/不可」というのがあり、私がいいなと思った物件は「不可」だったのです。何ていうことだ!これがオーストラリアなら「外国人不可」なんて完全に違法で、大家さんは面倒なことになるでしょう。オーストラリアは世界中から人が集まっている国ですから、そのようなことは許されません。違法です。そういう環境で育ってきたから、すごくショックでした。
今も似たような問題に出会います。それは僕が外国人だからです。僕には状況は変えられない。日本では常に外国人ですから、アパートを借りる時は常にそのような問題にぶつかります。僕は日本人じゃないから、そのような状況は変えられません。そしてそれが、この国のやり方なのです。
複雑なコミュニケーション
昔、その当時付き合っていた彼女の実家がある青森に行った時のことです。駅に着き、彼女のお母様が車でお迎えに来てくれ、家まで乗せていってくれました。
そこで初めてお父様と対面し、夜中の11時だったにもかかわらず「おはようございます!」と言ってしまいました(笑)しかも靴を履いたまま家に上がろうとしたし・・・皆さん驚いていましたが、僕にはその理由が分かりませんでした。3、4年前ですから、日本に来たばかりの頃ですね。
それは置いておいて、その彼女はあまり自分の意思表示をしない人でした。彼女が何か欲しがっている時でも、僕はそれを推測しなくてはなりませんでした。
例えばここにグラスが2つありますね。1つのグラスにはアイスティーが、もう一つにはグレープジュースが入っています。もし僕が「アイスティー、欲しい?」って言っても、彼女は「いらない」と言うでしょう。たとえ本心ではアイスティーを飲んでみたいと思っていたとしてもね。だから僕はその通りに解釈しました。それで日々過ごしてきました。
しかし後になって、彼女が言う「いらない」は、本当は「それでも本心を察してよ」 ということだったのです。 これはめちゃくちゃ大きなカルチャーギャップでした。
彼女の欲しいもの、やって欲しいことを知るのはすごく大変でした。それは彼女が僕に、常に「彼女の本心を推測する」ことを求めてきたからです。いくら僕が彼女に直接的な表現で聞いたとしても、彼女は自分の意思とは反対のことを言ってきました。本当に頭が混乱しましたね。
日本で年取ることは考えられない
オーストラリアはいつも懐かしく思いますね。だから年に数回シドニーに帰ります。でも帰ったら帰ったで退屈になって、日本に戻りたくなるんです(笑)
僕の中では、日本にずいぶん長居したという感じです。たとえ日本を離れることになっても、僕は日本と何らかの形でいつもつながっていたいし、日本には頻繁に来たいです。
でも、例えばこれから4年間、日本に住み続けられるかと言われたら、ちょっと分からないです。でも東京にはいつでも帰って来たいし、日本と何年も無縁の生活を送るのは嫌です。だから今のところはここにいます。でも日本で年を取っていくことは考えられない。もし現役を引退したら、僕はシドニーに帰るでしょうね。
日本で不便を強いられた時、僕は家族と話したくなります。でも孤独は感じません。なぜなら日本人や日本に住む外国人の友達がいるからです。でも彼らはどこまで行っても家族にはなり得ないんです。
*撮影:T.Yさん
ライルさんにとって、東京って何ですか?
第2の故郷です。
東京が良い場所とかそうでもない場所とか、それはなかなか言えないです。東京は好きな場所ですし、良い悪いを超えるくらい長く住んできました。とても住み心地が良いと思います。ワクワクして、面白い、毎週のように新しいことが起きていますしね。人やファッション、人々の行動、新しい店、起きる変化 – 何かを見つけるたびに驚きの連続です。
物事が絶えず変化する街。それが東京だと思います。