My Eyes 米大統領選2016 ⑧ 資本主義 vs 社会主義
ダニエル・ペンソ
コラムニスト/翻訳家
新年明けましておめでとうございます。旧年中は私のコラムをお読みいただき、誠にありがとうございました。今年は2016年、米大統領選の年ですね。1人の政治オタク(笑)の目から見た今のアメリカの政治状況を、引き続きお伝えしたく思いますので、お付き合いのほど宜しくお願いいたします。
さて、今年1回目のテーマは「資本主義 vs 社会主義」です。バビロニアやエジプト、中国、ギリシャ、ローマの古の時代から現代に至るまで、人類の歴史において長らく議論が繰り広げられてきたわけですが、つまりそれは「人は政府の統治をどこまで必要とするのか?」「人はどこまで政府の統治から自由であるべきなのか?」を問うものでした。
現在のアメリカの政治情勢では、民主党は社会主義的政党になり、ヨーロッパの社会民主主義路線を模倣しているようにも見えます。一方で共和党は資本主義や一般市民のための自由を追求してきました。
社会主義はかつて、大きな曲がり角を迎えました。特にソビエト連邦の崩壊ですが、それだけでなく最近でも、ベネズエラやアルゼンチン、スペインなどで左派政党が敗北を喫しています。さらに中国やベトナムといった社会主義(または共産主義)国においても、政府は素知らぬ顔で資本主義を受け入れました。なぜなら資本主義は経済発展に役立つ仕組みであることが歴史的に証明されたからです。
だけど、ちょっと待った!
電力や水、道路管理、衛生などを政府が統制する場面においては、社会主義体制、または社会主義的要素を持つ体制の方が機能しやすいこと、これもまた歴史的に証明されています。野放図な資本主義や縁故資本主義とは真逆の在り方です。
中でも縁故資本主義は共和・民主いずれの支持者の間でも大きなテーマとなっています。彼らはいわゆる“支配者層”(establishment)という存在に対して非難の眼差しを向けます。それが共和党の上位層であろうが民主党の上位層であろうが、です。Establishmentは、おそらく今のアメリカの政治において最も人々が敏感に反応する言葉と言えます。
多くの人々は支配者層を非難し、その結果としてドナルド・トランプ氏やバーニー・サンダース氏への支持が集まりました。サンダース勢力はある程度弱まってきてはいますが・・・
一人は億万長者のビジネスマン、もう一人は社会民主主義者を自認するバーモント州選出の無所属の上院議員というこの2人の候補者は、今年の大統領選に向けた選挙活動が始まって以来、人々の話題の中心になっています。
ところでアメリカの「縁故資本主義」とは、一体どんなものなのでしょう?
その温床は製薬、保険、石油、金融、軍産複合体など、あらゆる分野に広がっています。各業界、または特定の利益団体が投票権を持ち、政治活動特別委員会(Super Political Action Committee)に資金を投じて、彼らの利害を代表する候補者を支援します。これがアメリカの典型的な縁故資本主義です。
もしトランプ氏やサンダース氏がestablishmentではないとしたら、一体誰がestablishmentなのでしょうか?
ヒラリー・クリントン氏が民主党サイドのestablishment、マルコ・ルビオ氏、ジェブ・ブッシュ氏、クリス・クリスティ氏、ジョン・ケーシック氏、カーリー・フィオリーナ氏が共和党サイドのestablishmentと言われています。一方ベン・カーソン氏、ランド・ポール氏、テッド・クルーズ氏は、表向きはestablishmentではないとされています。
この縁故資本主義は、日本や世界の人たちにとっても懸念すべきものです。なぜでしょうか?それは、establishmentはシリアのアサド大統領を退陣させ、シリアとロシアを戦わせようと目論んでいると言われているためです。しかもその戦いは、第三次世界大戦につながるとも言われているのです。
やはり選ばれるべきは、establishment「ではない」候補者でしょうか・・・
ダニエル・ペンソ
米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、食。日本への旅行時には落語を楽しむ。
*ダニエル氏の詳細は以下のページをご覧下さい。
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*ダニエル氏の意見は、My Eyes Tokyoとは関係ありません。