ロース・ジェナさん(ドイツ)

インタビュー&構成:徳橋功
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Jenna Röhrs
イベントオーガナイザー/モデル/タレント

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「GACKTに会ってお礼を言う」それが私の夢でした。

 

 

 

My Eyes Tokyo、4人目のドイツ人インタビュー。ドイツ北部、バルト海沿岸の小さな街からやってきた、ロース・ジェナさんです。

私たちの友人からご紹介を受けて実現した今回のインタビュー。お会いする前にその方から送られてきたFacebookのプロフィール写真を拝見し、その容姿端麗ぶりに腰が引けてしまいましたが、実際にお会いしたらすごく気さくな方でした。ほとんどおしゃべりのようなインタビューでしたが、日本への深い愛情の中に、ちょっとチクリとした指摘もあったり・・・

私たちは思いました。「こういう人こそ、日本の企業が迎え入れたら、真にグローバルな環境になっていくのでは?」と。

*インタビュー@原宿
*英語版はこちらから

 

寝言で日本語!?

私は普段イベント企画会社で、カナダ人社長のもとで働きながらモデルとタレントの活動をしています。提携しているホテルで、ハイクラスの人たちが集まるネットワーキングパーティーなどを開催しています。

私は去年(2014年)3月に来日しました。その前は約6年間、地元から電車で1時間ほどのところにあるハンブルク大学で日本語や日本文化を勉強しました。それ以外に1年間、姉妹校提携をしていた学習院女子大学に留学しました。

子どもの頃から、なぜかは分からないのですが日本が好きでした。小学校1年生の頃、ある授業で先生が「みんな、自分の髪の毛の色は好きですか?」と聞いてきて、私は「好きじゃない。黒い髪がいい」と言ったんです。だから街でアジア人を見かけると、もう目をキラキラさせて見ていました。

10歳くらいの頃、私は寝言で日本語っぽい言葉を20秒くらい、ペラペラと話したそうです。お母さんがビックリしていました。もちろん私が日本語の勉強を始める前だし、アニメも見る前です。前世が日本人だったのかな(笑)

14歳の頃にドイツでアニメ『セーラームーン』のブームがあり、ドイツ語の吹き替えで見て夢中になりました。それが、実際の日本との出会いでした。同じ時期に放送されていた『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』も好きでした。

 

GACKTが開いた日本語の扉

16歳の頃、ミュージシャンのGACKTの音楽に出会い、ハマりました。日本の音楽が好きなポーランド人の友達に教えてもらったのです。私が日本語の勉強を始めたのは、GACKTがきっかけです。彼の音楽を通じて、日本語の響きの美しさに惹かれました。だから私は「いつかGACKTに会って、直接お礼を言おう」と思いました。それが私の夢になりました。

その夢に向かって、私は日本語の勉強を独学で始めました。私は文法の本が大嫌いで、音で聴いて覚えるタイプでした。もちろんテキストは使いましたが、メインの教材ではありませんでした。

日本のアニメを、最初は英語字幕付きで見ました。アニメはそれぞれのキャラクターがはっきりと話すので、外国人にはお勧めです。

アニメの内容が大体分かるようになった後、日本のドラマに挑戦しました。『のだめカンタービレ』が好きだったのですが、初めて見た時は彼らが何を話しているのかさっぱり分かりませんでした。特に男性の俳優さんのセリフは全然聞き取れませんでしたね(笑)

それらが聞き取れるようになり、大学入学前に初めて日本に来ました。アニメやマンガが大好きで日本に行く留学生は多いですが、日本に来てからカルチャーショックを受けて「自分には合わない」と言って母国に帰ってしまう外国人がいると聞いていました。いつかは日本に行こうと思っていた私は、そうなることを避けたかったので、日本に下見に行ったのです。日本の全体的な雰囲気や日本人の親切さ、和食などを堪能し、私は日本がますます好きになりました。

その後、地元近くのハンブルク大学で日本学を専攻しました。日本語の勉強は最初の2年間だけで、あとはドイツ語で日本文学や日本文化について学びました。そのため大学の残りの期間は、日本語を独学でマスターする必要がありました。だから日本での留学が一番勉強できましたね。当たり前ですが、周りの人たちは日本語で話しているわけですから。

ところで先ほど言った「GACKTに会って直接お礼を伝える」という私の夢ですが、それは日本に来てから叶いました。私が勤務しているイベント企画会社の社長が彼と知り合いで、私がその夢のことを伝えると「いいよ、紹介してあげる」と言いました。社長の友達の友達がGACKTだったのです。そして、実際にお会いして、きちんとお礼を伝えました。

 

「外国人はいつまでも外国人」

今は都内にあるシェアハウスに、5人の外国人と一緒に住んでいます。日本人は住んでいません。なぜならここ日本では、外国人は日本人よりも部屋が借りにくく、私が住んでいるシェアハウスは、そのような人たちの受け皿になっているからです。

私がハンブルク大学で勉強していた時、日本人の先生から言われました。

「これから日本で生活したい人は、ひとつだけ覚えておいて下さい。日本では、たとえ何年間住んでいようと、外国人はいつまでも“外国人”なのです」

私も日々の生活の中でそれを感じます。アパートを探す時は書類をたくさん用意しなくてはならないですし、銀行でVISAカードを作りたくても作れません。他にも銀行口座を作る時、1つは作ることができても、貯金のためにもうひとつ口座を作ろうとしたら「今はかなり厳しいです」と銀行に言われ、結局作ることができませんでした。いわゆる“メガバンク”と言われている大手の銀行での出来事です。ここまでのことは来日前に予想していなかったし、大学入学前の“下見”でも見えなかったことでした。

私が先日帰国した時、母校があるハンブルクに行きましたが、トルコ人やロシア人、中国人、日本人など、外国人がたくさん歩いていることに気がつきました。彼らは普通にアパートを借りられるし、銀行口座も問題なく作れます。それどころか、ドイツ語には“外人”や“外国人”に相当する言葉は無かったように思います。きっとドイツにはいろいろな人がいるからでしょうね。

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故郷近くの街・リューベックにて

 

ちょっといびつな日本の“国際化”

東京は国際化していると思いますが、都会から離れたら、まだまだ外国人は珍しい存在だと思います。以前私が、山形で行われたGACKTのコンサートに行った時、山形駅に着いたら地元の人たちに手を振られました(笑)

東京の近くでも同じような経験があります。ディズニーランドに行った時、女の子たちが私を見て「キャー!」って叫んだりして(笑)それは私が、彼女たちの抱く“金髪・青い眼”のプリンセス像にぴったりハマったからかもしれません。

ディズニーランドで思い出したのですが、日本人はディズニーが大好きですね。私がある銀行で口座を作る時に、行員さんから「ディズニーキャラクターの通帳もありますが、いかがですか?」と勧められました。私もディズニーは好きですが、大人の年齢だったので断ったんです。するとその行員さんはショックを受けたみたいで「何で作らないんですか?ディズニーですよ?」って(笑)

日本人は英語が苦手と言われていますが、その一方で、私が日本語で話しているのに、英語で返事されることがあります。仕事で関わっているネットワーキングパーティーでも同じことがあって、お客様に私が日本語で話しかけても、片言の英語で返ってくる(笑)その片言の英語がたまに聞き取れなくて「私は日本語を話しているのに、なんで困った顔をしながら片言の英語で返してくるのかな?」とよく不思議に思いました(笑)英語の上手な方もいますが、英語があまり話せない日本人の方が多い印象です。

下北沢の居酒屋に行った時も、英語のメニューを渡されました。私は「ありがたいのですが、大丈夫です」と言って断りました(笑)でも英語のメニューがあるのは良い方で、中には英語のメニューも無ければ、店員さんも英語が話せないようなお店はたくさんありますよね。私も昔居酒屋さんでアルバイトしていたのですが、そこも私以外は全く英語が話せませんでした。だから外国人のお客さんが来たら「ジェナ、よろしくね!」って(笑)

時々外国人タレントとして“再現ドラマ”の収録の仕事を受ける時がありますが、その時も「日本語を話さないでください」とディレクターさんから言われます。いただく台本は日本語で書かれているのに、本番では「その内容を英語で話してください」と。その後にオンエアされたものを見ると、私の声が声優さんの吹き替えになっていました(笑)

 

もっと休んでください!

日本は街がとても綺麗ですね。特にお手洗いの綺麗さには驚きます。逆にドイツの地下鉄のトイレには行かない方がいいです(笑)その面では、日本はまるでユートピアみたいです。駅でも、人はきちんと並んで電車に乗りますよね。ドイツはまったく逆ですから。

ドイツと似ているのは、日本人の仕事に対する真面目さや几帳面さ。でも一方で、やはり感じるのは日本の“ストレス・カルチャー”です。それは終電の混み具合に表れています。ドイツ人と日本人は、気質は似ていますが、ドイツ人は定時で帰ります。

休暇についても、私の会社の提携先のホテルの人は、結婚をしたのに、代わりの人がいないという理由で、ハネムーンの休暇がもらえないとか・・・しかも会社に泊まり込んで仕事をしたりする。もっと日本人には休んでほしいです。

ドイツ人は「休まないと良い仕事ができない」と考えます。疲れ切った状態のまま仕事をしても、きちんとした成果は出ません。ドイツ人もよく働きますが、その分きちんと休みも取るので、効率良く仕事ができます。

私は日本が大好きです。だけど日本の会社では働きたくない。わがままですね(笑)その意味では、社長がカナダ人で、日本人が全くいない今の会社で仕事ができて、本当によかったです(笑)でも一方で、会社で開いているネットワーキングパーティーで日本人の方々ともお仕事させていただいていますし、そこで日本語力をさらに磨けるから、とてもありがたいです。

 

緑がほしい

今は日本での生活を楽しんでいます。私が東京で好きな街は、代々木上原です。学習院女子大学の留学時代に住んで、街の雰囲気がすごく好きになりました。東京なのに高い建物が全く無いから、ストレスを感じないんです。街並みが可愛らしいし、すぐ近くに代々木公園もありますしね。

ただそれでも、もっと自然がほしいかな。東京は、全体的に自然が足りない気がします。少しでもスペースができると、すぐに建物を建てようとするし、しかもその建物が高い。それに、日本人はバルコニーがあっても、あまりそこにお花を飾ったりしないように思います。だから余計にストレスを感じます。まさにコンクリートジャングルですね。庭が大好きな私には、時々物足りなく思うことがあります。だから時々、私の故郷の風景を懐かしく思います。

言葉にするのは難しいですが、思う通りに行かないこともありますし(笑)いつまで日本にいるのかは分かりません。人生のプランニングは特にないです(笑)ただ今は、自由に生きている感じですね。

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ジェナさんが勤務する会社が主催するイベントにて DJのスチュアート・オーさんと。

 

ジェナさんにとって、東京って何ですか?

私にプラスの変化を与えてくれた街です。

留学先が東京の大学だったから、1年半前に再び日本に来た時も、東京以外の街には住もうとは考えていませんでした。それは東京に慣れていたからだと思います。

故郷の小さな街を飛び出して日本に留学した時、いろんな素敵な方と出会えたし、素敵な友達を作ることができました。そして私の人生を良い方向へ大きくチェンジしてくれました。 うまく行かなかったこと、辛かったこともありましたが、そういうときは「失敗は成功の元!」と自分に言い聞かせました(笑)

変化は必ずしも良いことばかりではないと考え、恐れる人もいると思います。でも変化は、私に素晴らしいものを与えてくれました。多分、東京に留学しなかったら、きっと今の私は存在しなかったでしょうし、大学卒業後に東京に再び戻ってきてからも、素敵な出来事や、奇跡的とも言える出来事にたくさん出会いました。私は今、それらの出会い全てに感謝しています。東京に来て良かったです。

私はこれからも、日本と関わって生きていくでしょう。「次は何が起きるんだろう?」といつもワクワクしながら、東京で生きていきたいと思います。

 

My Eyes Tokyo

Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー

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