My Eyes 米大統領選2016 ④ 選挙を揺さぶる移民・難民問題(後編)
ダニエル・ペンソ
コラムニスト/翻訳家
移民を送り出す国と受け入れる国
今世界で一番話題になっているのは、間違いなくヨーロッパの移民問題(Migration crisis)でしょう。アメリカに住む多くの人々の関心を引いています。
「自分の国をあとにする人は、一体どんな人なのか?なぜ彼らは国を出る必要があり、そしてどの国が彼らを受け入れるのか?」
南北アメリカで言えば、一般的に移民を送り出しているのはメキシコやグアテマラ、ホンジュラス、コロンビア、ベネズエラ、キューバです。一方で移民を受け入れているのはアメリカとカナダです。
アメリカ以外では、移民を送り出しているのは一般的にアルジェリア、ナイジェリア、エリトリア、リビア、シリア、エチオピア、スーダン、パキスタン、インド、バングラデシュ、トルコ、中国、ミャンマーなど。一方で移民を受け入れているのはイギリス、ドイツ、スウェーデン、フランス、イタリアです。
ハンガリーとセルビアの国境付近を歩く移住者たち *原文の”Migrants”をそのまま訳しました(2015年8月)*Photo from Wikipedia
移民擁護論
移民を擁護する人たちは、移民が労働力の供給に役立っていることを指摘します。そのため、彼らを受け入れることは国の利益につながり、社会をより多様なものにすると言います。このような“多文化主義”は社会を豊かにします。それに加えて、移民の多くは戦争により荒廃した国々から来ます。これらの国は受け入れ国側の介入主義政策と対立していますが、移民たちは母国に残して来た家族を助けるために新天地で働き、家族に送金しています。
ニューヨーク・チャイナタウンの衣服工場群 *Photo from Wikipedia
移民反対論
古くから、移民反対論者は差別主義者、外国人嫌い、保護主義者だと見なされてきました。もし移民を受け入れたら、ウェイターや清掃業者、料理人などの雇用は彼らに奪われてしまう、というのが彼らの主張です。
また反対論者は、時間をかけてその属性が変化していきました。かつては、反対論者の大半は白人でした。しかし最近では共和党やイギリス独立党、英米の不法入国者に反対する政党を支援する人の中に、多くの民族的マイノリティーがいます。アメリカの経済がボロボロになった今、反対論者は言います。
「9200万人が失業し、5000万人がフードスタンプ(食料配給券)をもらっている。だから不法移民が職を得る余地などない」
もうひとつの問題として「もらうだけの移民」(英語で”Gimmegrants”。詳細は http://www.urbandictionary.com/define.php?term=gimmegrant を参照のこと)というものがあります。移民の中でも、貧しい国から来て、アメリカやドイツ、スウェーデンなど移民先の国で、税金を払わずに生活保護手当送金小切手を受け取るだけという人たちのことを指します。
おそらく今の議論の焦点のひとつとして、移民側と受け入れ国の人たちとの宗教対立があると思います。移民の多くがイスラム教徒であり、一方の受け入れ国の大半はユダヤ教徒やキリスト教徒、あるいは無宗教派が多数を占めているという状況が多いと思われます。イスラム教徒の一部は過激派で、受け入れ国側でのイスラム法の普及を推し進めることを目指しています。これが受け入れ国と移民間の対立を生み出してきました。
賛否両論が交わされる移民問題。日本の皆さんは、どのようにお考えでしょうか?
ダニエル・ペンソ
米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、食。日本への旅行時には落語を楽しむ。
*ダニエル氏の詳細はこちらをご覧下さい。
*ダニエル氏の意見は、My Eyes Tokyoとは関係ありません。