My Eyes 米大統領選2016 ④ 選挙を揺さぶる移民・難民問題(前編)
ダニエル・ペンソ
コラムニスト/翻訳家
「世界の終わりか・・・」
ある予言に、人々は不安に陥りました。自称“予言者”の「隕石が2015年9月に地球に激突する」という発言が、世界を混乱に陥れたのです。 今のところ、そのようなことは起きていませんが・・・
しかし一方で、これまでに世界の人々が経験してこなかった大きな動きがヨーロッパで起きています。前例にないほどの数の移民や難民がトルコや地中海、イベリア半島を経由してヨーロッパに流入しており、特にトルコ経由の動きが顕著です。
これは ヨーロッパでは第二次世界大戦以来、アメリカではベトナム戦争以来見られなかった規模の人の大移動です。
シリア難民がヨーロッパを目指した背景を説明したビデオ。日本語字幕付。
短期的に見ればヨーロッパ各国への影響ですが、長期的にはアメリカもきっとこの動きと無縁ではいられないでしょう。なぜならオバマ大統領は「1万人から10万人の移民を2016年から17年にかけて受け入れる」ことを提案しているからです。
(参照元:“Kerry: US to accept 85,000 refugees in 2016, 100,000 in 2017” *英語)
オバマ政権は、基本的にこれまで移民に対し寛容でした。
しかし、今年9月に米調査会社が行った世論調査では、アメリカ人の大多数、72%以上の人たちがシリアからの難民の受け入れに反対しています。彼らはそれが治安悪化につながることを懸念しているのです。民主党支持者でさえ、その4割がオバマ大統領の提案に不賛成の意を表明しています。
(参照元:“MAJORITY OF AMERICANS DON’T WANT ANY SYRIAN REFUGEES ALLOWED IN – Even 40 percent of Democrats reject Obama’s plan to resettle 10,000” *英語)
米当局は「シリア紛争から逃れてアメリカにやって来る人の大半が、イスラム過激派組織「ISIL」とつながっている可能性があり、その一人一人を厳重に調査するための資金は無い」と言います。
では、大統領選候補者はこの移民・難民問題について何と言っているかを見てみましょう。
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まさかと思うかもしれませんが、共和党候補者の中でトップを走るドナルド・トランプ氏は、難民の受け入れに対して前向きな態度を表明しました。しかし具体的な受け入れ人数には言及していません。
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民主党候補者のヒラリー・クリントン氏:「紛争地域から来る人のうち、75,000人の入国は認められるべきだ」
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同じく民主党候補者のバーニー・サンダース氏:「トルコやサウジアラビアは、難民を生み出した原因の一つであるISILとの戦いにもっと多くの力を投入すべきだ」と言いつつも、難民受け入れ人数については言及せず。
「大統領選を揺さぶる移民問題」の後編では、移民や難民問題に加え“不法滞在者”に関しても触れる予定です。お見逃しなく!
ダニエル・ペンソ
米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、食。日本への旅行時には落語を楽しむ。
*ダニエル氏の詳細は以下のページをご覧下さい。
日本語版 英語・日本語版
*日本語訳:徳橋 功
*ダニエル氏の意見は、My Eyes Tokyoとは関係ありません。