My Eyes 米大統領選2016 ③「第三党」ってご存知?
ダニエル・ペンソ
コラムニスト/翻訳家
皆さんこんにちは!いかがお過ごしでしょうか。今はもう9月、蒸し暑い夏から涼しくて過ごしやすい季節に変わりつつあることと思います。
さて、2016年米大統領選にご興味をお持ちの方なら、一風変わった候補者の存在にお気づきのことと思います。このコラムでもかなり取り上げていますが、共和党から名乗りを上げているドナルド・トランプ氏です。彼は今、世論調査で首位を走っておりますが、一時は何と、共和党でも民主党でもない”第三党”からの立候補も噂されていたのです。今回はこの”第三党”についてお話させていただきたいと思います。
アメリカという国は世界の民主主義国の中でも特にユニークです。なぜなら多数の政党が権力を奪い合う日本やヨーロッパ諸国と違い、アメリカでは完全に2つの政党だけが国をコントロールしているからです。
でも皆さんはご存知だったでしょうか?これまでの米大統領選では第三党や、2大政党と連携しない候補者が、選挙に大きな影響を及ぼしたという歴史があるのです。
その典型が、1992年の大統領選に出馬したロス・ペロー氏です。ペロー氏は共和党や民主党のいずれにも所属しない独立候補として立候補したにもかかわらず、何と一般投票総数の18.9%を獲得、人口にして1974万1065人からの支持を得ました。これはつまり、ビル・クリントン氏に対する43.0%の反対、ジョージ・H・W・ブッシュ氏(いわゆる”パパブッシュ”)に対する37.0%の反対を意味しました。「ペロー氏は共和党の票を奪っていった」と多くの人が言い、また「ブッシュ氏はペロー氏に対して怒りの念を抱いており、もしペロー氏が選挙戦から下りなければ、ブッシュ氏は彼に暗殺をほのめかすだろう」という噂まで流れたほどです。
ペロー氏はその次の1996年の大統領選にも出馬し、一般投票総数の9%を獲得しました。
その4年後の2000年の大統領選挙。忘れもしない、ジョージ・W・ブッシュ氏が一般投票総数で劣勢になりながらも、選挙人投票数で優勢に立ち大統領に選ばれたというものですが、この選挙では環境保護を主張する”アメリカ緑の党”のラルフ・ネーダー氏が一般投票総数の2.74%を獲得しました。
ラルフ・ネーダー氏 *Photo from Wikipedia
たった2.74%と思うなかれ。フロリダ州では9万7421人もの人々がネーダー氏に投票したのです。フロリダ州といえば、わずか537票差でブッシュ氏が勝った場所。その結果、ブッシュ氏は総選挙で辛くも勝利を果たしました。
他の第三党の候補者で選挙の流れに影響を与えた人に、第26代大統領のセオドア・ルーズベルトがいます。1901年から1909年の2期にわたり大統領を務めたルーズベルトは、自身の政策継続者探しに難航し、その末に1912年、”進歩党”という政党を選挙母体として出馬。88票の選挙人投票数を獲得しました。
セオドア・ルーズベルト *Photo from Wikipedia
時を経て1968年、”アメリカ独立党”を選挙母体として出馬したジョージ・ウォレスは、大統領選で46票の選挙人投票数を得ました。このアメリカ独立党は人種隔離政策を支持していました。
ジョージ・ウォレス *Photo from Wikipedia
それにしても、今回の2016年大統領選で、もしドナルド・トランプ氏が第三党から出馬していたら、未来はいったいどうなっていたでしょうか?それを考えてみるのも面白いかもしれませんね。 では、また次回お会いしましょう!
ダニエル・ペンソ
米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、食。日本への旅行時には落語を楽しむ。
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*ダニエル氏の意見は、My Eyes Tokyoとは関係ありません。