加藤翼さん Part1
構成:徳橋功
ご意見・ご感想は itokuhashi@myeyestokyo.com までお願いします。
Tsubasa Kato
国際交流団体 代表
私たちMy Eyes Tokyo(以下MET)がリアルに出会った素敵な”コスモポリタン”をリアルにご紹介するトークイベント「MET People」。第10回目のゲストは、国際交流団体”The International Center in Tokyo”(ICT)代表の加藤翼さんです。
この”ICT”という名前を聞いて「どこかで聞いたことがあるような・・・」と思われた方がいらしたら、すごい記憶力です!(笑)今年9月初めに開催した”セルビア洪水被災地復興チャリティイベント”で、METと共催させていただいた団体です。
そのイベントを行うにあたり、準備期間わずか1ヶ月の間に私たちは何百通ものメールやメッセージのやり取りを行いました。普通それだけの交流をしていたら、ほんのちょっとの違和感は生じるもので、それでも妥協しながら前に進んでいくのが大人の流儀ですが、翼さんとは1ミリたりとも違和感を感じませんでした。だからこそ、100人超のお客様にお越しいただいたセルビア大使館でのイベントが成功のうちに幕を閉じることができたのだと思います。
実はこのMET People #10を開催したのは、セルビアチャリティイベント開催の直前。イベントが成功するかしないか、まだ全く分からないという不安がある中で行ったMET Peopleでしたが、私たちはチャリティイベントの成功を確信しました。翼さんがICTを立ち上げたきっかけや、ICTさんが掲げる目標が、私たちMETと多くの面で共通していることが分かったからです。
今回は、私たちMETと完全な”同志”である翼さんの、東京とニューヨークという世界2大都市で繰り広げられる、”ダイバーシティ(多様性)”をめぐるTrue Lifeをご覧下さい。
*インタビュー:山崎千佳
*会場:フロマエcafe & ギャラリー(荒川区西日暮里)2014年8月30日
*撮影:土渕正則
*協賛:セレナイト(詳しくはこちらをご覧下さい)
☆長年にわたる地道な国際交流活動から、ついにビジネスが生まれました。非営利活動で何を培い、どのように営利事業に応用したのか – 詳しくは翼さんインタビュー第2弾をご覧ください。
”日本ファン”を増やしたい
私の活動の目的は、東京にいる外国人と海外の文化に興味がある日本人が交わる場を作ることです。そのために、在住外国人向けに日本文化を知っていただくクラスやワークショップを開くわけですが、私はその先のことも見ています。つまり彼らが母国に帰った後、ご友人やご家族に日本のことを話すことで”日本ファン”が増える、そのきっかけ作りをしたい。そんな思いで日々動いています。
私たちの活動に参加してくれる外国人は、多くは若い人たちで、アニメをきっかけに日本に来たような人たちが多いです。他に日本で仕事をしている人や英会話講師、メーカーの日本駐在員の奥様方もいらっしゃいます。一方で日本人は海外在住経験がある人、留学を考えている人、英語力を伸ばしたいとお考えの方々ですね。
今のような活動を始めたのは、私の母が大きく影響していると思います。母はかつて日系航空会社のフライトアテンダントで、私を産んだ後に退社して自宅で英会話を教えていました。私は帰国子女ではないし海外留学経験もありませんでしたが、そのような環境が幸いして、私は小さな頃から英語には触れることができました。そして次第に海外にも興味を抱くようになりました。
キャリアを捨ててニューヨークへ
ある日、政府系金融機関に勤める私の夫にニューヨーク赴任の話が飛び込んできました。当時私は旧財閥系銀行に勤めていましたが、彼と共に現地に行くことに決めました。
その理由は2つありました。「どうしても海外に住んでみたかったから」、そして「海外で親友を作りたかったから」です。”親友”と呼べるほど深い仲を築くことができる友達を、英語でのコミュニケーションを通じて作れるまでになりたいと思いました。当時は外国人の友達がいなかったんです。しかも夫は帰国子女で海外経験豊富だったから、そんな彼のことも海外に住めばさらに分かるのではないか・・・夫のニューヨーク駐在は、それらが全て可能になるチャンスだと思いました。
本当のことを言えば、私は銀行員ではなく外交官になりたかった。外交官として日本のことを海外に伝えたり、海外の人と共に活動するような仕事がしたいと思っていました。だから私は、キャリアを捨てて夫と一緒に日本を出ることに躊躇はありませんでした。
「日本語を話さなくちゃ・・・」
夫のニューヨーク駐在期間は2年。私はそのうちの最後の半年を、現地の大学に通ってネイティブの人たちと学ぶことに充てようと決めました。先ほどもお話したように、母が自宅で英会話教室を開いていたから、英語を聞くことには慣れていました。でも会話には自信はありませんでした。だから一秒たりとも時間を無駄にしたくないと思い、そのために必要な英語コミュニケーション力を身につけるために動き始めました。わずらわしい”駐妻”(駐在員の奥様)の世界には、ほとんど関わりませんでした。時間の無駄でしたから(笑)
ニューヨークで私が英語を勉強したのは、無料のESL(English as a Second Language:第2言語としての英語)クラスでした。このような学校はニューヨーク中にいくらでもあって、私は3つのESLクラスに朝・昼・晩通う生活を半年ほど続けました。それ以降は1つの学校に絞ったんですけどね。
ニューヨークでは、夫と話す以外は完全英語漬けで、日本人の友達は作りませんでした。現地の日本語メディアにも一切触れず、夫が帰宅したら「ああ、日本語話さなくちゃ」って思ったほど(笑)だけどなかなか英語力は思うように伸びませんでした。
「しゃべらないなら帰れ!」
当時の私は、独り言を英語で言っていたほどでしたが、通っていた学校では誰とも何も話さない人でした。そんな私に、すでにニューヨークで仕事もしているクラスメイトのコロンビア人男性が言いました。
「君さ、クラスに来ているのはいいんだけど、何でしゃべらないの?君がいる分、他の人がこのクラスに参加できないんだよ。だったらその席を、他にこのクラスに参加したがっている人に譲った方がいいよ」
私はしゃべりたかったんです。元々がおしゃべりでウルサいタイプですから(笑)でも皆の英語を聞き取ることはできても、自分の意見を言うのに時間がかかりました。話そうとしても、彼らのバーッと話すスピードに圧倒されたり、日本人ぽく文法を気にして話せずにいました。
でも「これでめげていたら、終わりだな」と思いました。だから私は、翌日から自分を変えました。授業中は、何でもいいから挙手をして、言葉が出てこなくて「あ〜〜」としか言えなくても、とりあえず一日2回は何か発言しようと思いました。英語が下手でも、ゆっくりと話せば人は耳を傾けてくれるもの。そしたら私に「帰れ!」と言ったクラスメイトも私を認めるようになったんです。私にも意見があり、きちんと自分を持っている人なんだと感じたからでしょうね。第一、ニューヨークの街には下手な英語をしゃべっている人なんてたくさんいますから(笑)
”学ぶ”から”使う”へ
そんなふうに格闘するうち、ニューヨークに来て半年ほど経って急に英語力が上がりました。私も話せるようになったし、ニューヨーカーの話す速い英語にも慣れてきました。
その段階で、私は英語を”学ぶ”ことから卒業して、英語を”使う”ことにシフトしようと考えました。英語を使って何かをしようと思ったのです。ESLクラスで仲良くなった人たちを通じ、フランス・韓国・中国・パナマ・トルコ出身の5組の夫婦と仲良くなりました。私が中心になってパーティや小旅行を企画したり、一緒にショッピングやカフェに行ったりしました。
思えばそれらが、今の活動の原点かもしれません。大人になってから親友と呼べる人たちができた、しかも全く国籍や育ってきた環境が違う人たちと・・・そんな素晴らしい体験をさせていただいたニューヨークでの生活が、夫の駐在期間満了と共に終わり、私は日本に帰国しました。
NYでの体験を東京でも
帰国後、私は抑え切れない気持ちを爆発させるように“The International Center in Tokyo”(ICT)を立ち上げました。ニューヨークから帰って来てわずか3週間後、まだ船便で日本に送った荷物が届いていないのに、です(笑)私がニューヨークのESLのクラスや学校の放課後、休日などにいろんな国の人たちとしたことが東京でも体験できるようなプラットフォームを、いち早く再現させたかったのです。
特に、私にはお手本がありました。日本帰国の半年前まで通っていたESLで行われていた、アメリカの文化や歴史を先生の目線で面白おかしく伝えるクラスでした。今の時代らしく、先生が集めてきたYouTube動画や記事をプロジェクターに映し、私たち生徒はそれらを見てディスカッションしました。それまで教科書中心の英語講義しか経験の無かった私にとって「こんな面白い英語の学び方があるんだ!」と、すごく新鮮でした。英語を学ぶというよりは、アメリカを学ぶ感じです。それに倣って私は、日本に住んでいる外国人に”今の日本””リアルな日本”を伝え、彼らからのフィードバックをいただいて私も学びを得る、そんなクラスを開きたいと思いました。
ICTを立ち上げて一番最初のクラスは、カフェでのフリーディスカッションでした。テーマは特に決めず、好きなことを話す感じです。しかも初めは外国人は来ていませんでした。外国人の集客に頭を悩ませるうち”Meetup”という世界的なネットワーキング・サービスの存在を知り、それを利用し始めてから外国人もクラスに来るようになり、ディスカッションもテーマを決めてそれに沿って行うようになりました。外国人がICTに参加する目的は、わざわざ日本で英語を話すことではなく、日本人の友達を作ること。そのようなことも、私はこの活動を通して知りました。
セルビア洪水被災地復興チャリティイベントにて
セルビア大使館(2014年9月5日)*写真提供:ICT
もっと多様な東京へ
2012年にICTを立ち上げて以来、ワークショップやイベントを約100回開催してきました。会の運営やファシリテーションはだんだん形になってきたと思いますが、これから先に行くためには、高い壁が存在します。
そのひとつが、事業化です。まだ始まったばかりですが、2014年10月より、ICTは日本企業と在住・訪日外国人のニーズをマッチングする”NeedsArch Project”をスタートさせました(注:同年11月現在)。具体的には、日本企業が知りたい外国人向けサービスのニーズ(商品の販売、開発、改良など)を聞き取り、ICTメンバーである在住・訪日外国人がモニターとなって意見やアイデアを企業にフィードバックする、というワークショップ兼インタビュー調査会をICTが企画・運営します。
ただしICTが考えるNeedsArchは、あくまで日本の文化や芸術、その他様々な”日本らしさ”を在住・訪日外国人に伝え、魅力的な日本を発信していくことで日本の”ファン”を増やしていくことが主な目的であり、調査や収益の最大化が目的ではありません。日本企業の皆さまの”夢”や”思い”を形にするお手伝いをさせていただくとともに、ICTに集う在住・訪日外国人と日本人が共に楽しむプラットフォームを引き続き提供していきたいと思っています。
それを実現するためのもうひとつの課題は、外国人の参加者やモニターをいかに増やすか、ですね。ゆくゆくは外国人をオーガナイザーに迎えて、彼らの求める企画や彼らのアイデアを活かしてカタチにしていく必要があると思います。
ICTの活動のコンセプトは”外国人と日本人がつながる場所を作ること”、そして”日本を外に伝えていくこと”。これらを続けながら、私がニューヨークで肩まで浸かった”ダイバーシティ(多様性)”の風を、この東京にも吹かせたいと思います。
翼さん関連リンク
The International Center in Tokyo:http://www.intlcentertokyo.com/(英語)
NeedsArch:http://www.intlcentertokyo.com/needsarch *下にスクロールすると日本語が表れます。
ICTのMeetupページ:こちら(英語)
*新たに発足した「NeedsArch」についてはこちらの記事をご覧ください。
この度、My Eyes Tokyoの徳橋さんからコンタクトがあり、加藤さんの記事(考え方)に興味がありコメントを入れました。私は、現在インバウンド向け受け入れ施設(宿泊施設・日本文化交流体験施設)として「組立て式ユニット和室」という製品を企画・製造している豊裕物産株式会社の横井といいます。最近は、輸出企業との連携を取りつつあるところですが、実現には至っていません。
私の思いとしましては、日本から無くなりつつある「和室という空間」を日本人より日本文化に興味のある外国人(インバウンド・アウトバウンド問わず)の皆様を通しクチコミ・SNSを通し国内外に拡散していくことです。出来ましたら、御社とどのようなコラボレーションが可能かご連絡いただければ幸いです。
豊裕物産株式会社 横井様
お世話になっております、My Eyes Tokyoの徳橋と申します。お返事が遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。この度は当記事をご覧くださり、誠にありがとうございました。加藤氏も横井様にご連絡を差し上げたとのことですので、もしお手元に届いている場合、お時間のございます時にお目通しいただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。
My Eyes Tokyo 徳橋
この度、My Eyes Tokyoの徳橋さんからコンタクトがあり、加藤さんの記事(考え方)に興味がありコメントを入れました。私は、現在インバウンド向け受け入れ施設(宿泊施設・日本文化交流体験施設)として「組立て式ユニット和室」という製品を企画・製造している豊裕物産株式会社の横井といいます。最近は、輸出企業との連携を取りつつあるところですが、実現には至っていません。
私の思いとしましては、日本から無くなりつつある「和室という空間」を日本人より日本文化に興味のある外国人(インバウンド・アウトバウンド問わず)の皆様を通しクチコミ・SNSを通し国内外に拡散していくことです。出来ましたら、御社とどのようなコラボレーションが可能かご連絡いただければ幸いです。