カレン・ペレイラ・ゴメスさん (インド)

インタビュー&構成:徳橋功・多田友美
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Karen Pereira Gomez
インド料理@ 横浜市山手(2009年から日本在住)

同じインド人でも人それぞれ、 同じインド国内でも各地で違います。それをみんなに見せたいんです。

 

外国人のご自宅で各国の家庭料理が学べる”Niki’s Kitchen“と、東京や日本で活躍する外国人とのインタビューを集めたサイト”My Eyes Tokyo”のコラボコーナー “MET × Niki’s Kitchen” 今回で8人目の先生のご紹介です。

インドのムンバイ(旧ボンベイ)出身のカレン・ペレイラ・ゴメスさん。情熱的で、元気いっぱいの彼女は世界中の新しい事や物を探すのが大好き。Niki’s Kitchenのクラスでは、 カレンさんが本当のインド、なかでも生まれ育ったコミュニティが見せるインドの多様性を、料理を通して伝えることに一生懸命なのがよく伝わってきます。

何が彼女をそうさせるのか・・・?そのヒントは彼女のコミュニティの世界観、インドのスローガン、そしてインドの人々の道徳観の中にあるのかもしれません。

*インタビュー@山手(横浜市中区)
*日本語訳:多田友美
*こちらをクリック! → Niki’s Kitchenの記事へ

英語版はこちらから!

 

イースト・インディアン・コミュニティ

皆さんの中には私はインド人なのに、なぜスペイン系の名前である「ゴメス」という名前をもっているのか不思議に思われる人がいるかもしれませんね。これは私が生まれ育ったキリスト教のコミュニティの特徴です。

私たちキリスト教コミュニティの人間は欧米風の名前を持っています。「ゴメス」は私の夫の名字で、「ペレイラ」は私の名字です。その昔、欧米諸国がインドにキリスト教を広め、それによりキリスト教になった人たちは、欧米風の名前を付けるようになりました。私の名字「ペレイラ」はポルトガル語です。

私の故郷はボンベイです。そして「イースト・インディアン・コミュニティ」(East Indian Community)と呼ばれるコミュニティで育ちました。ボンベイはインドの西側(West)に位置しているのに、です。かつて私の祖先は、イギリスによって17世紀に設立された東インド会社で働いていたため、それがそのままコミュニティの名として残ったのです。

私たち「イースト・インディアン・コミュニティ」に属する人間は、アメリカやカナダなど、世界中に合わせて100万人くらいいます。100万人といっても、インド全体の人口を考えると少数派です。ですが、それでも100万人ですからかなりの大人数ですね。

私たちが世界中に散らばっているのには、いくつかの理由があるんです。例えば、私の母国語は英語です。私たちは家庭内でさえ英語で話をします。インドでは、ごく少数の政府系の学校は例外ですが、それ以外の全ての学校の授業は英語で行われます。だから、英語を話すこと自体は別に特別ではありません。だけど家でも英語を話すのは私たちくらいなものです。

欧米風の名前を持っていることも含めて、私たちは欧米の影響を強く受けています。そのため、たとえ母国を離れたとしても、アメリカやカナダにいる方が楽だと感じることが時にあるようです。その結果、多くの人が 海外に移民し, 今では世界中に約100万人規模もの人口を持つコミュニティになったのです。

この日のレシピ! (2011/8/13)

 

旅するように料理する

Niki’s kitchenのことを聞いた時には「わぁ!楽しそう!」と思いました。世界中の料理を並べ、みんなに見せることができる。そして日本の人たちを自宅に招き、紹介することができる。素晴らしいアイディアですね。私はプロの料理人ではありませんが、Niki’s Kitchenに参加することができてとてもやりがいを感じています。

クラスのレシピを決めるときは、地域ごとに分けて考えます。いつもクラスごとにテーマを決めていて、ある時にはインドのビーチリゾートであるゴア地方の料理をやりました。例えば 魚のフライエビのカレーなどなど。ある時にはボンベイの全く別の顔をお見せしようと思い、ボンベイ屋台料理をやりました. これはカレーのような, いわゆる典型的なインド料理とは全く違うものです. また、いろんな料理を入れた小さな器を一つのお皿に載せて提供するターリー(日本でいうところの定食)を作ったこともありました。これは グジャラート料理(比較的スパイス控えめで、甘酸っぱい、甘辛い味付けが多い)です。そして私たちのコミュニティ – 「イースト・インディアン・コミュニティ」 – このコミュニティには独特のレシピがあり、これをテーマにしたこともあります。

今日のクラスについて言うと、特にどこかの地域に焦点を置くことはしませんでした。今日のテーマは「夏」です。インド全国各地から「夏」に関するレシピをメニューに盛り込みました。とにかくインド料理はものすごくバラエティに富んでいます。なので地域ごとに区切って考えた方が分かりやすいと思うんです。まるで旅行を楽しむような感覚で!

実はボンベイは、インド中の多種多様な人々、文化、食文化のるつぼです。多くの人がインド各地から仕事を求めてボンベイにやってきます。東京と似ていますよね。だからボンベイの食文化はインド全国各地の文化の影響をたくさん受けています。その証拠に、ボンベイには北インド料理レストランもあれば南インドレストランもある。おそらくボンベイにはあらゆる種類のレストランがそろっているでしょう。ボンベイにいながらいろいろ地方の料理が味わえること、これは大都市に住む特権ですね。

教える姿は、優しいお姉さんのようです。(2011/8/13)

 

知られざるインドの顔

日本といえば寿司、しゃぶしゃぶ、ラーメン。それではインドといえば?もちろんカレーですよね。もしくは、みんな羊の肉を食べているとか、みんなIT業界で働いている、などと思うかもしれません。私、日本に来て気づきました。どこのインドレストランでもカレー、ナン、バターチキンなど同じような物を出すんです。実際はそれらだけがインド料理では無いのに・・・

だから私はもっと本当のインド料理、みんなが知らないようなインドを見せたいんです。同じインド人でも人それぞれ、同じインド国内でもインド各地、みんな違います。私はみんなにそれを見せたいんです。

すでにお伝えした通り、インド料理のバラエティはものすごく豊富です。他のどんな国もインド料理に匹敵するようなバラエティは持っていないだろうと思います。私のクラスでは、生徒さんは何かしら新しいことを学んで帰ります。生徒さんは新しいことを体験したいと思い、そして新しい味を覚えて帰る。ちょうど今日、生徒さんの一人が「今日初めて ポハ(お米をつぶして乾燥させたもの)を食べました」と言っていました。彼女はそれがインド料理だと思っていなかったんですね。嬉しいです!ポハを食べるのは彼女にとって初めての体験だったのですから。またもう一人は「今日のメニューは驚きです!カレーもナンも無いインド料理なんて、典型的なインド料理とは全然違う」。そうなんです、カレー無し、ナン無し。これだって立派なインド料理なんです。

ポハを料理中のカレンさん。平たいお米が使われています (写真左)

 

「一つ屋根の下で」

インドにはその国柄を表現するのにピッタリなスローガンがあります, 「統一と多様性」(Unity in diversity)です。

政府は言います。「あなたのコミュニティを認めよう。あなたの信仰の自由を認めよう。でもインド人であるということは忘れてはならない」これが「統一と多様性」というスローガンの意味するところです。

さっきも言ったように、インド全国各地、人々はそれぞれ全然違います。言語、文化、宗教・・・本当にすべてがバラバラです。そんな多様な環境の中でも “インド人”としての統一性が私たちの意識の中にあり、それがインドという一つ屋根の下で生きる道しるべになっているんです。私たちインド人は“違う“ということに慣れていますし、何より私たちはコミュニティ各々の独自性をとても尊重しています。

私は、インド人なら誰でもこの多様性渦巻く環境の中で育ってきたと思います。私たちはどこかで、自分たちとは違うバックグラウンドを持った人たちと交わる必要が出てきます。 例えばオフィス。そこでたくさんのヒンディ語コミュニティ出身の人に出会うでしょう。ベンガル語のコミュニティ出身者もいるでしょうし、その他たくさんのコミュニティ出身の人もいるでしょう。でもみんなと交流し、お互い分かり合っていかないといけない。 同じことが学校生活にも言えます。違うコミュニティの人同士でも同じ学校に行きます。私たちにはイスラム教の子たち、ヒンドゥー教の子たち、 シーク教 の子たち・・・それはもう全く別世界の者同士ですが、みんなお互いを尊重しながら分かち合っていくのです。

インドの夏メニュー!

 

*各料理の詳しい説明はこちらから

 

カレンさんにとってNiki’s kitchen って何ですか?

私にとってNiki’s kitchenとは、日本の人たちと出会う場所。そして自国やコニュニティーの文化、インド料理を紹介することのできる場所です。

Niki’s kitchen もまた、多様性のある空間だと思います。そんなところも私がNiki’s kitchen で教えている理由の一つです。生徒さんたちは、世界各国から来日した先生にその国の料理を習うことができ、その国の本当の料理を見ることが出来る。このインターナショナルさが、私にとって最高に魅力的なんです。
今日ではグローバル化が進み、世界は狭くなりつつあります。だからこそ、他の国の人々や文化を尊重することが、より一層重要になってきていると感じます。

Niki’s kitchen がこれからもずーっと続きますように!

 

カレンさんのリンク

ニキズキッチンのカレンさんのページ(日本語):クリック

 

My Eyes Tokyo

Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー

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