岩瀬香奈子さん&アルーシャ Part2
インタビュー&構成:徳橋功
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Kanako Iwase & Arusha
ネイルサロン運営会社 代表取締役
難民だって、自分の人生を自分の手で変えられる。この日本なら。
難民をネイルアーティストとして雇用しているネイルサロン「アルーシャ」を経営する岩瀬香奈子さん。インタビュー第2部は、アルーシャの現在と、目指すべき道についてお送りします。
*インタビュー@アルーシャ(港区虎ノ門)
*英語版はこちらから!
(Part1からの続き)
「アルーシャ」のネイル研修を受けたのは、どこから来た人たちですか?
世界中からです。難民申請にパスした、日本で有効な就労ビザを持っている人というのが、研修参加の条件でした。法に触れる危険性を無くすために、それらを証明する書類のコピーもいただきました。
だけど、日本語がほとんどできない難民がかなりいました。例えばアフリカから来た難民は、英語も日本語も話せず、フランス語しか話せないという人が結構います。何年日本で生活していても、です。そういう人たちは、ビザが一番早く下りたという理由だけで日本に来ていますから、事前に日本のことをほとんど知らず、自国とのギャップに戸惑っているんですね。
家族と一緒に来て、家ではフランス語を話し、外でも友人たちとフランス語で話す。結局、4〜5年日本にいても日本語を話せなかったり、家族と離れて1人で来日した方は、友達もいなく、引きこもりのようになってしまう難民も多いそうです。
そういう人たちの中から、3人をプロとして選びました。彼女たちは今年5月15日のサロンオープンでデビューしました。
丁寧なお仕事ぶりが評判を呼び、リピーター客が増えています。
研修で脱落した人もいましたか?
初めの3週間の研修は、事情があった1名を除き全員修了しました。ただ、その時点では実際にお金をいただけるようなレベルではなく、その後、継続して研修を行いました。そこで、どんどん来られなくなってきました。彼女たちの中には「交通費を払えない」という方もいました。
そのような理由で断念されることはとても残念でしたが、基本的に私は「やりたい人、続けられる人は続けて下さい。そうじゃない人は、辞めることになっても私は止めません」というスタンスでいます。だって、自分の人生は自分で決めてほしいし、何より楽しくないと続かないじゃないですか。
それに、難民の方はこれまで自分の意思とは違った人生を歩まざるを得なかったけど、日本では違う。自由があり、民主主義のこの国では、自分ががんばれば、収入を増やして生活を改善することができる。だから「私があなたのライフを変えるのではない。あなたがあなたのライフを変えるんだ」と彼女たちに言い続けていました。
その厳しさが、営利で社会貢献事業をやる、ということなんですね。
もし御社が仮にNPOだとしたら、プロになれない人をも面倒見なくてはならないと思うんです。でもビジネスとなると、そうやって割り切るしかないのでしょうね。
日本のマーケットの要求するレベルは高いですから。でも逆に日本で成功したら、世界で通用するネイルアーティストになれる可能性だってあると思います。
今のところ、有り難いことにお客様は口コミで来てくれる方が大半です。いろんな所からお客様が来て下さいます。中には遠く仙台からいらした方もいます。地元にいくらでもネイルサロンはあるはずなのに、です。それは料金の安さの他に、国際貢献への高い関心がお客様にあるからでしょうね。
それに、正直言ってまだまだ他店とは競争できません。私共のネイルアーティストたちは、経験はまだ半年ほどです。一方で街のネイルサロンには、10年選手がたくさんいるわけじゃないですか。だからむしろ、他店さんをリスペクトしているくらいです。
その代わりに私共は、甘えかもしれませんが社会支援を表に出しています。でも一方で「お店では、ネイルアーティスト(=難民)と自由にお話しできますよ」とお客様にはお伝えしています。他に難民とお話できる場所は無いですから。だから、初めは安さだけに惹かれて来たお客様が、日本にも難民がいるという事実を知るようになって、その輪がどんどん広がるといいな、と思います。
素敵なネイルアートの数々。他店の3分の1〜5分の1の料金だそうです!
これからどんどん難民の方々を受け入れようと考えていますか?
そうですね。来月(2010年10月)から2回目の研修をやる予定です。1回目は私自身が何の予測もつかないまま、プロと呼べる人が出てくるかどうかも分からずに研修を開いていたし、難民側も「私たちがプロになれるのかしら」といった疑問があったと思うんです。
でもこれまでの活動をマスコミ各社が広くご紹介していただいたおかげで、「研修に参加したい」と言ってくれる難民の方々が増えました。今ならプロデビューした難民たちの仕事ぶりを研修生に見せることができますので、具体的な将来像を描けると思います。他の職場で経験するような、難民への差別から生じるイジメも、ここにはありませんから。
これからは「アルーシャ」をどうしていきたいですか?
いろんな所にネイルサロンを出していけたらいいな、と思います。
でも一方で、細かい手作業が苦手な難民の方のために、語学学校なども始めてみたいです。
どんな事業をやるにしても「難民支援」という柱は変わらずにあると思いますね。
岩瀬さん関連リンク
アルーシャ:http://www.arusha.co.jp/
*Twitter : http://twitter.com/arusha_jp
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