セレンさん

インタビュー&構成:徳橋功
ご意見・ご感想は itokuhashi@myeyestokyo.com までお願いします。

 

Cellen
英語キュレーター

 

 

無駄なことはしたくない。だから英語学習の失敗例を徹底的に集めたのです。

 

 

 

これまでは、日本人の起業家さんや社会貢献活動に従事している方々を主にご紹介してきたMy Eyes Tokyoですが、今回は少し違います。日本の「英語学習」の在り方を、今後大きく変えるであろう日本初”英語キュレーター”のセレンさんです。

My Eyes Tokyo主宰の徳橋は、昨年10月頃、今後の事業の柱を英語事業に据えることを検討し始めました。そしてそのためのリサーチを行っていましたが、まさにその渦中で出会ったのがセレンさんでした。
都内の某英語サークルに徳橋が参加し、上級者席で会話を楽しんでいたところ、一人のハンサムな青年がやってきました。彼は流暢な英語で自己紹介し、その後も参加者と共に会話を楽しみました。そこへある参加者が一言。「セレンさん、海外経験はありますか?」 徳橋を含め、誰もが「はい」と言うと思っていました。発音が非常にクリアで、彼の口からは、まるで歌うように滑らかに英語が流れてきたからです。しかし、その次にセレンさんが発した一言に、誰もが耳を疑いました。

「ありません」

一斉に皆が驚きの声を上げました。しかも聞けば、その前年の初めまでは全くと言って良いほど話せなかったとのこと!アメリカ人を含め様々な国から来た人たちの英語を耳にし、アメリカで発音矯正を受けたことのある徳橋は思いました。「普通にアメリカで生活しただけでも、このレベルに行くにはだいたい2年かかる。そこに1年あまりで、しかも日本国内だけでの生活で到達するとは・・・」。英語事業、中でも初心者に照準を絞った英会話事業に関心を持っていた徳橋は、彼の学習メソッドこそ、自身の初心者向け英会話クラス開設に応用できるのではないかと思いました。

そのような思いでまとめたこのインタビュー、いつもと違い英語には訳しません。このMy Eyes Tokyoをいつもご覧いただいているお礼として、英語学習が伸び悩んでいる方、これから英語学習を始めようと思っている方、そして始めようとしてもなかなかそのきっかけが掴めない方に、My Eyes Tokyoからソリューションをご提案いたします。皆さんの英語力が、もっともっと上に行くこと間違いなしです!

*インタビュー@渋谷

 

日本人と英語

2013年2月1日、僕は英語学習者に向けたウェブサイトを立ち上げました。「wailingual.com」です。Wailingualを日本語で書くと「和イリンガル」、つまり「和+バイリンガル」ですが、これは「日本人として学ぶ英語や、日本人として失うべきではない心を求める」ことを提唱する考えのことです。「日本人として・・・」というとかなり壮大に聞こえますが、皆さんに大事にしていただきたいのは”今の自分”です。

僕は最近までサイドジョブとして、レストランで働いていました。そこは従業員が自分を除いて全員外国人でした。お客様への接客は英語ですが、ここで海外出身の人たちと日本人とのリアクションの差がハッキリと表れていました。

日本人は外国人から英語で話しかけられた途端、ヘラヘラしたりオドオドしたりする傾向にあります。でも彼らは、日本語を話している時はそうならないはず。それなのに何故、英語を話しかけられただけで人格まで変わってしまうのか・・・それがすごく不思議でした。海外の人では、まずこのようなことはありません。片言の英語だろうが店員に迎合しないし、元々の自分と変わらない強さを持っています。

何十年も生きてきて、その過程で培ってきた経験や歴史があって、その土台の上に今立っているわけです。それなのに何故、その瞬間に使う言語によって人格が変わるのでしょう?僕たちは英語を第2言語として話すわけですから、ネイティブのように話せなくても全然良いわけです。逆にこの場面で人格が変わらないようになれば、日本人と英語の関係はもっと変わると思います。

 

失敗例を徹底的に研究

英語を勉強することを決意したのは2010年末ですが、すぐに勉強を始めたわけではありません。僕がまず最初にしたのは「英語学習の失敗例を集める」ことでした。英語学習を始めるまでの1週間、その作業を続けました。

ほとんどの人は、英語学習を始める際このようなアプローチを取りませんが、それは僕自身が単純に「無駄なことをしたくなかった」からです。この作業を行ったおかげで「これだけは絶対にやるまい」と心に決めて勉強を始めることができました。また、失敗例を徹底的に洗い出すことで、自分が英語を話せるようになるための方法論を編み出そうと考えたのも、その理由です。

それまでの僕は、英語学習に対して全く無知でした。日本では、人は英語に対してどのようにアプローチしているのか – それについては全く知らなかったのです。

調べていくうちに、度肝を抜かれました。「皆こんなに英語で苦労しているの?」と。

正直、僕は「英語なんて誰でも習得できる」と思っていました。英語学習で苦労するなんて思っていませんでした。だから「英語なんて、すぐに話せるようになってみせる」と決意しました。僕は元々、年齢や肉体の衰えなどに関係なく習得できるものに関しては「全て可能」だと思っていましたから。

 

英語は掃除機と同じ

失敗例を調べていく中で、最も印象に残ったのは「英会話スクールに行くこと」「目的の無い留学をすること」「大量に英語教材を購入すること」でした。

このような人に共通するのが①自分に自信が無い②自分が英語を話せるようになった時をイメージできない③文法マニアです。 その中で②については、僕は英語を勉強しようとしたわけではありませんでした。僕は「英語を使って自分の世界を広げようとした」のです。英語のフレーズを覚えることが目的ではなく、そのフレーズを使って自分の世界を広げることが目的でした。もし小さい頃から英語が話せていたら、日本に住んでいなかったかもしれない。でも今僕が日本に住んでいるのは、それは自らそれを選択したからなのか、それとも日本にしかいられないから日本にいるのか – でも英語が話せるようになれば、その選択肢は確実に増えます。自分の世界が広がっていくことをイメージさせてくれた、それが英語だったのです。

③については、受験英語の延長で英語を勉強する人や、資格取得を目的としてしまうことが挙げられます。結局その人たちにとっての英語は「崇めるもの」だったりする。英語と、それを学ぶ人が同じ位置に立っていないんです。

一方で僕が思う英語は”道具”です。帚や掃除機、洗濯機、Gパンと同じなんです。使ったり履かないと意味が無いし、それによって汚れが着き、体にフィットし、やがてボロボロになっていく。道具ならそうなるはずで、英語も例外では無いはずです。でも日本ではそうではない。英語と言うと「一張羅のスーツ」みたいに思う人が多いように思います。

http://wailingual.com/

英語学習者向けオリジナルサイト「wailingual.com」  TOP via kwout

 

3年間のロードマップ作成

もう一つ、僕が英語を勉強する時に決めたのは「期間」です。

僕は10年も20年も英語を勉強したくはありませんでした。2010年の暮れに英語に本気で取り組むことを決めた時、僕は学習期間を、2013年12月31日までと定めました。英語圏で生活できるくらいの英語力を、3年間で身につけようと決めたのです。僕は勉強が嫌いなので、英語の勉強を3年以上続けるつもりはありませんでした。

一方で語学を身につけるには、最低でも3年は必要だと考えました。1年目で文法や発音、スピーキングやリスニングの基礎を築き、2年目は1年目で培ったスキルを活かして実際に英語を使い、慣れる。そして最後の3年目で基礎と応用の双方に磨きをかける。だから最低3年は必要だと考えたのです。

期間と目標を決めたら、次に考えるのが「いかにして最短でその目標を達成させるか」でした。一番最初に僕が「あらゆる人たちの失敗例」を洗い出したのはそのためです。自分で定めた目標を、自分に課した期間内で達成させるための方法論を、英語学習を開始する前に徹底的に考えました。つまり、3年間の英語学習ロードマップを2010年暮れに決め、2011年1月1日に実行に移したのです。

そのロードマップに従って、僕は”1日5時間学習”を毎日繰り返しました。しかも1日たりとも休みませんでした。単語を覚える、ディクテーション、発音、文法などを机に向かって勉強することを、年末年始であろうと旅行中であろうと自分に課しました。そして最初の1年間、365日はそれをやり切りました。そのために睡眠時間を多少犠牲にしましたが、どんどん英語力が身に付くのがとにかく楽しかった。やればやっただけ身に付きましたから。

 

全ては”楽する”ために

僕の根底にあったのは、最初にも言いましたが「無駄なことをしたくない」という思い、そして「楽をしたい」という思いでした。でも誤解しないでいただきたいのは「楽をする=サボる」では無いということです。逆に、サボるためにそれまで一生懸命活動に取り組んでいないと、結局楽はできない。真に「楽をする時間を作る」なら、その前後に大変なことも経験しなければならないのです。

だから僕は楽をするために、徹底的にやるべきことをやってきました。例えばリスニングで楽をするために、徹底的にディクテーション(英語音声を聞き取り、聞き取ったものを書き取るトレーニング方法)とスラッシュリーディング(英文を返り読みせず、語順にそって文を理解し、文を読み終わると同時に文全体の意味を把握する訓練方法)を行ってきました。これらは、大変であることを理由に避けて通る人が多いですが、僕は効果的だと思うなら、大変だろうが厭わずに取り組んできました。

僕が英語を勉強する時に常に心がけているのは「変な集団心理に巻き込まれないこと」です。英語学習者の間で信じ込まれていることは、客観的に冷静に見たら眉唾ものであることが多い。僕は元々、誰もが当たり前に信じていることを一歩引いた目で見る人間です。だから、巷にあふれている英語教材に関しても疑問視しているのです。

 

全力で肉声を伝えたい

僕は最近では、ネイティブ講師との英語ワークショップや、最短かつ最も効果的な英語学習法を伝える『傷だらけの英会話習得術』での講演などをさせていただくようになりました。まだまだ自分自身も学習者であることを忘れず、それでもできるだけ多くの人に、自分が正しいと思うことを伝えたい。たとえそれによって一部から横やりが入ろうとも、無駄なことをせずに英語を話せるようになる人が増えてくれるのであれば、僕は自分を犠牲にすることを全く厭いません。それに僕は、極端に言えば100円のワークショップでも1万円のワークショップでも、全力で、本音で、本気で”正しいこと”を伝えることに変わりはありません。値段に見合った話し方ができるほど、僕は器用ではないですから。

それに、何かを覚えるのに必要なのは「体験」です。例えば僕は、自分の学習法などをTwitter上にまとめて配信していますが(*詳しくはこちら)やはり肉声でなければ伝え切れないことはあります。
それにウェブや本では臨場感が決定的に欠けています。だから実際に話を聞くのは、僕はすごく良い体験だと思います。そう信じているからこそ、僕は人の前で話すのです。

 

傷だらけの英会話習得術

2月13日(水)に開催される、My Eyes Tokyoさん主催の『傷だらけの英会話習得術 Vol.2』は、英語初心者が対象です。ただし「誰でも簡単にペラペラになれる」などという話はしません。そんなことはあり得ないし、語学を習得するためには、一定の負荷を自らにかけることは避けられないからです。

これから英語学習を始めようとしている人、英語の勉強を挫折した人たちに、目標を達成してほしい。だからそのための気持ちの在り方や、実際にやるべきことをお伝えします。それがこの会での僕のスピーチの狙いです。

人それぞれ、身につけたいスキルや目標が違うから、そんなことは不可能なのではないか、とおっしゃるかもしれません。しかし実際は、ある一定のレベル、具体的に言えば10段階のうちのレベル4ぐらいまでは、どの人も取り組むべきこと、やるべきことは同じだと僕は考えています。スポーツに当てはめれば、どの競技を選ぶ場合でも役に立つトレーニング方法や、気持ちの持ち方をお伝えすることと同じです。

僕が2月13日にお話するのは、そのレベル4に到達するのに必要なことです。

ただし、10段階のうちの4段階目だからと言って、低く見ないで下さい。というのは、日本で「英語が話せる」と思われている人のほとんどが、レベル4くらいだと僕は思っているからです。

そのレベルに達するまでに反復して行うべきことを、いかに飽きないで続けられるか。僕自身に課してきたことを楽にでき、それでいて効果がしっかりと表れるようにするためにはどうすれば良いか。それらを精神面と実践面の両面からお話したいと思います。

最後に、英語を勉強する上で一番大事なことは「英語を学習した、その先を見ること」だと思います。学校で勉強することが、その先の進路を見据えてのことと同じです。英語を学ぶ期間はやがて終わり、いつか必ず「英語を使う期間」が始まる。そこで初めてスタートラインに立つのです。スタートラインに立ったときのビジョンこそが、英語学習において一番大事 – そのようなこともお伝えしたいと思います。

自分がやってきたことを全てぶつけるつもりです。「来て良かった!」と思っていただける講演に、必ずしてみせます!

 

セレンさんにとって、英語って何ですか?

特別なものでも何でもない。単なる「Gパン」であり、普段着です。何十万円もするGパンを買うつもりは無いし、そんなGパンを部屋に飾ることもしません。

元々は外来品であるGパンも、履きこなせばしっかり自分に似合う普段着になり得ます。ただ外国人の真似をするのではなく、日本人の体型に合った、僕たちの身の丈に合った着こなし方があるはずです。日本人の持つ素晴らしい心や考え方を損なうことなく英語を習得したい – 僕の「ワイリンガル」という発想は、このような思いから生まれました。

一人でも多くの人に、僕はその思いを伝えたい。学者でも教授でも何でもない僕だけど、体験をして経験をして、それこそ傷だらけになりながら、これからも有機的な情報をどんどん発信し続けたいと思っています。

 

*2月13日開催「傷だらけの英会話習得術 」詳しくはこちらから!(申込可)*終了しました。

 

セレンさん関連リンク

wailingual.com: http://wailingual.com/
Twitter: https://twitter.com/cellen0
Togetter: http://togetter.com/id/cellen0
えいごのA-HA!!: http://english-aha.blogspot.jp/

 

My Eyes Tokyo

Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー