ロベルト・ミロ・ルアセスさん(キューバ)
インタビュー&構成:徳橋功
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Roberto Miro Luaces
飲食店経営者
僕の人生の考え方は「やるか、やらないか」。たくさんの壁にぶつかってきたけど、後悔はありません。
今年2025年で19周年を迎えるMy Eyes Tokyo(MET)。立ち上げ以来、世界五大陸から日本にいらした方々にインタビューさせていただきました。そんなMETも、まだ出会っていなかった”あの国出身の人々”がいます。そのひとつが、キューバです。
米フロリダ半島最南端から直線距離でわずか150キロ。人口1000万人超を誇るこの国から日本に来て暮らす人々は約300人と言われています。今回はその一人、上野で小さなサンドイッチ店を営むロベルト・ミロ・ルアセスさんをご紹介します。
偶然オンラインでお見かけし、その人懐こそうな笑顔に惹かれてインタビューをお願いしたら、すぐにOK。そして上野駅そばの路地にあるお店”Cuban Sandwich & Deli AHINAMA”を訪れると、お昼前だからかすでにたくさんの人が列をなしていました。そしてついにロベルトさんにご対面し、さっそく魅力的な笑顔をカメラに収めようとしたら、衝撃の一言。
「私、すっぴんだけど、大丈夫?」
これで一気にロベルトさんLOVEになったMET。国籍問わず様々なお客さんを笑顔とジョークとサンドイッチとコーヒーでおもてなしするロベルトさん・・・いえ、ロベルト”ちゃん”(「”さん”をつけないで!」とご本人に言われました笑)に、お仕事の合間を縫って、ご来日から開店、現在に至るまでのストーリーを、基本的に明るく、時々ちょっぴりしんみりと語っていただきました。
※インタビュー@Cuban Sandwich & Deli AHINAMA(上野)
俺のキューバサンド
”キューバサンド”は、もともとは”キューバ人が作るサンド”の意味。キューバ移民が多いアメリカのマイアミで人気となり、アメリカ映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(原題:Chef)が2014年に大ヒットしました。
一方で日本では、キューバサンドを知っている人はまだ少ないですね。でも映画をご覧になった人には「あのサンドイッチだ!」と気づいていただいています。
日本にはキューバサンドのお店がいくつかありますが、大半は日本人が作っています。しかし”キューバ人が作るキューバサンドのお店”は、日本全国でここだけです。私が子どもの頃からずっとキューバで食べていた味をそのまま再現しており、日本人向けにアレンジすることはしていません。
このお店に来たら迷わずご注文いただきたいキューバサンド。定番”エル・クバーノ”をいただきました。バターの香りにパンとプルドポークの香ばしさがマッチしてとってもおいしい!他にも6種類のキューバサンドが楽しめます。
ロベルトちゃんが淹れるキューバコーヒーは「酸味が少なく飲みやすい」と、コーヒーが苦手な人からも大好評。豚の皮を揚げたサクサク食感の”チチャロン”もサイドメニューに。
ミンティなノンアルコール・モヒートで気分スッキリ!
いわば”私が好きな味”を提供しているということ。私が「美味しい!」と思う味は、きっと皆さんも気に入ってくれると信じて作っている。だから店内にある看板には”俺のキューバサンド”と書いています。”俺の〇〇”という日本の飲食店のネーミングが面白くて、それをちょっと真似してみました(笑)
よく見ると”ORENO(俺の)CUBANO(クバーノ ※’キューバサンド’の意味)”の文字が!ちなみにその右側にある”MECHA QUÉ RICO”は”めちゃおいしい”の意味(笑)
お店の名前”Ahinama(アイナマ)”には特別な意味があります。もともと私はサルサダンスをやっていましたが、Ahinamaは”踊って盛り上がる””最高の時間を過ごす”といった意味で使われていた言葉です。私がダンスの先生をしていたとき、生徒さんたちに「いいね!」と褒める時に「Ahinama!」と言っていました。
このお店を開く前、赤坂で初めて自分のお店をオープンした時、生徒さんに相談したのです。「どういう店名が良いだろう?」って。そしたら彼らは「Ahinamaに決まっているよ!」って。「じゃあAhinamaにします」という感じで名付けました。
日本大好き!(ただし食べ物を除く)
日本には、キューバで出会った日本人の友人に誘われて来ました。住み始めた赤坂を拠点にして、六本木や浅草、横浜、千葉などいろんな街でサルサダンスを教えるように。最初は3か月だけ日本にいて、そのあとスウェーデンに行こうと思っていましたが、日本にハマって、あっという間に1年が経ち、もう他の場所に行けなくなっちゃった(笑)日本はめちゃめちゃ安全で、遊ぶのも楽しかったから「ここにいるしかないかな」と。
日本語は最初はまったく話せませんでした。でも、だからこそ楽しかった。言葉を理解できない状況で日本をあちこち周り、やがて日本のことを理解していく。そのプロセスが楽しかったんですよね。
私はもともとテレビっ子だから、日本に来てからもめちゃめちゃテレビを見ました。志村けんさんやドリフターズの番組などを見ながら日本語を学び、それを実際に使うことで覚えました。同じプロセスを竹内力さんが主演のヤクザ映画でやったら、私のダンスの生徒さんがみんな怖がっちゃった(笑)
でも、食べ物だけは別。実は私は、日本食をほとんど食べません。日本の家庭料理を、来日してからの24年間で一度も食べたことが無いのです。日本に行くと決めた頃、母がすごく心配していました。「あなたは『おしん』の国に行くのに、魚も食べないけど大丈夫?」って(笑)実際、出汁の味がどうしても私に合わなかったので、日本の食材を使いながらも、自分なりにアレンジして作るようにしました。例えば初めて焼きそばを作ったとき、スパゲッティのようにケチャップを入れたこともあるくらい(笑)。
キューバ風おにぎり。豆が入った炊き込みご飯”コングリ”に、プルドポーク/プルドビーフ/プルドチキン/エビから好きな具材を選んで入れてもらえます。中身は開けてからのお楽しみ(笑)
フリホーレス(黒いんげん豆のシチュー)とコングリに、プルドポーク+プルドビーフ+プルドチキン+エビを全部乗せた”キューバ丼”。
超一等地で店を持つ
日本語を覚え、生徒さんたちにダンスを教える楽しい日々を送っていましたが、2010年頃にふと思ったのです。「僕はこの先も日本に住む。でもこの先ずっとダンスを続けるのは難しいだろう」・・・
そこで私は考えました。「自分のお店を開こう」と。私の夢だったし、年を取ってからも続けられる仕事だと思ったからです。子どもの頃は料理をまったくせず、ただ食べることが好きでした。料理を始めたのは日本に来てから。なのに自分のレストランを持つことを思い立ったんですよね。
私がダンスを辞めることに、生徒さんたちは驚いていました。なぜそのタイミングで決めたのか、今も分からないくらいです。でも彼らにまた会えることを願って、私は赤坂の一ツ木通りに面するビルの地下1階でバー”Latin American Bar AHINAMA”を開店しました。お店を持つのは初めてでしたが「とにかくやってみよう」と。周りからは「大丈夫?」と心配されましたが、私は迷わなかった。「失敗してもいいから、とりあえず挑戦しよう」と思ったのです。
やがてお客さんが増えてきたので、同じビルの1階も借りて”Cuban Restaurant & Bar AHINAMA”をオープン。経営を4年間、借金をすることなく続けてきました。しかし都心の一等地の高い家賃やスタッフのマネジメントなどのプレッシャーに押しつぶされそうになった。「何のために働いているんだろう」と思った私は、2016年に閉店することにしました。
その後、私はある有名ステーキチェーンの六本木店でアルバイトをするように。六本木では私は知られた存在だったので「ロベルトがここで働いてるの!?」と驚かれましたね(笑)半年ほど幸せな暮らし(笑)をしていましたが、ある日不動産屋さんから「いい物件があるよ。あなたのためにキープしているよ」と言われました。
前のお店から20メートルほどの場所にあるビルの6階、ルーフトップテラスが付いている素敵なスペース。私は2017年、新たに”Mojito Terrace Lounge AHINAMA”を開店。これまで私が学んだり経験したりしたことをこの店に全てぶつけました。自分だけでできることから始め、その後少しずつスタッフを増やしていきました。
そこへ、コロナがやってきたのです。
サンドでコロナを乗り越える
当時も、またその前に赤坂で開いていた店でも、私たちが必ず提供していたものがありました。それがキューバサンドです。アメリカ映画『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』が2015年に日本でも公開された時、配給会社の人がお店にいらして「映画とコラボしませんか?」とご提案され、私たちは彼らと一緒にフードトラックを出して代々木公園のフェスの観客にキューバサンドを販売しました。
そのような経験から”キューバサンドを専門に提供する小さいお店”というアイデアが浮かびました。その時に不動産会社からの紹介で、この物件を見つけました。開店に向けて工事をしていた時、近所の人たちは「ここにどんなお店ができるんだろう?」と楽しみにしてくれていました。そして2020年6月に”Cuban Sandwich & Deli AHINAMA”をオープンしました。
キューバの国旗に使われる赤・青・白でペイントされたお店。
内装はキューバの海やカラフルな街並みのイメージ。
当時は持ち帰りのみの販売でしたが、すぐに人気になりました。ソーシャルディスタンスを守りながらも、店の前に行列ができたほど。ソールドアウトになることも多く、とても順調でした。
2021年には浅草のホテルの1階に2号店をオープン。しかしホテル側の事情で閉めることになり、それを機に乗用車でも引くことができるトレーラーを導入しました。お店の味を移動販売で提供できるようにしたのです。
代々木公園で開催された”Salsa Street”にトレーラーで出店。赤坂時代のスタッフさんも応援に駆けつけた。初日はお店の前に大行列ができ、フェスティバル終了時間を待たずに閉店することになったのだとか!キューバサンドはもちろん、春にふさわしい、桜の花の塩漬けと桜シロップが入った”桜モヒート”(ノンアルコール)を、以前METでインタビューした臺彰彦さんとおいしくいただきました。
2025年3月
やがてお店が日本全国に知られるようになり、日本の人たちにも少しずつキューバサンドを知ってもらえるようになりました。しかも日本人だけでなく、日本に旅行に来る外国人もお店に来てくれるのです。すごくありがたいですね。
「迷ったら動く」 – 俺の人生哲学
お客さんには、楽しい思い出を持って帰ってほしい。食事をしていただくなら、美味しいのはもちろんですが、プラス「楽しかった!」「また来たい!」と感じてもらえる方が良いですよね。ただ料理を提供するだけではなく、お店の雰囲気やスタッフの対応も含めて、特別な体験をしてもらえたら嬉しい。私はもともとダンサーだから、人を楽しませることが大好き。エンターテイナーとしての私の気質が、このお店の雰囲気や接客にも反映されています。
将来は、日本全国にお店を出したいですね。東京だけでなく、北海道から沖縄まで、一つの県に一店舗ずつ出すくらいの規模にしたい。それが、私のゴールです。
私の人生の考え方は「やるか、やらないか」。白か黒か、はっきり決めるタイプなので、迷うくらいなら行動するほうを選びます。行動して、壁にぶつかりながら、いろいろな経験をして、料理の腕を上げ、経営のノウハウを学びました。
もし今もダンスを続けていたら、まったく違う人生になっていたはず。しかし、今の人生に後悔はありません。特別なことをしているつもりはなく、ただ自分にとって楽しいことを続けて、ここまで来たのだと思います。
ロベルトちゃんにとって、東京って何ですか?
もう自分の家のようなものです。
赤坂や六本木、代官山、芝浦、蒲田、浅草・・・来日以来ずっと東京に住んでいます。下町の雰囲気も好きですし、住みやすい街だと思います。
ロベルトちゃんにとって、日本って何ですか?
最高の場所です。
もちろん、細かいルールや面倒なこともありますが、それを気にしなければ、とても快適に暮らせる国。私は日本に来て本当に良かったと思っています。それは間違いありません。
日本は”幸せな国”です。
Cuban Sandwich & Deli AHINAMA
東京都台東区東上野3-23-5 新井ビル1F(地図)
※最寄駅:
・東京メトロ「上野」1番または2番出口から徒歩1分
・JR「上野」浅草口より徒歩3分
電話:03-6284-4547
営業日:月~日
営業時間:【月~金】11時30分~17時【土】12時~18時【日・祝】12時~17時
※キューバサンドが売り切れ次第 閉店。
定休日:不定休
※下記サイト & SNSをご確認ください。
ロベルトちゃん関連リンク
公式サイト:ahinama.tokyo/
Instagram:instagram.com/cuban_sandwich_deli_ahinama/
X:x.com/ahinamasandwich
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