アリーナ・クゼネツォヴァさん(ロシア)
インタビュー&構成:徳橋功
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Arina Kuznetsova
日系ジュエリーショップ セールス/マーケティングマネージャー
(2007年春よりアメリカ在住。それ以前に東京に5年滞在)
ニューヨークの人々はいろんな文化にオープン。だから皆さんに他の人と同じように接してくれるのです。
ちょうどお仕事を終えたばかりのアリーナ・クゼネツォヴァさんにインタビューさせていただきました。アリーナさんは現在、マンハッタンのソーホーにある京都発祥のジュエリー会社で働いています(※店舗は2007年11月、マンハッタンの5番街にオープン)。
アリーナさんはロシアのご出身。ニューヨークに来る前は東京の会社で働いており、外国人女性の日本での生活をサポートする活動に参加していました。ロシア、日本、アメリカの3カ国に住んだ経験を持ち、世界中を探検し、いろいろな人に会うのが大好きで、異文化を体験するのが大好きなアリーナさん。世界で最も多様性あふれる街ニューヨークを、心から愛しているように感じました。
*インタビュー@ソーホー(マンハッタン)
*英語版はこちらから
ニューヨークで語る日本
ニューヨークに来る前、私は東京に5年間いました。日本も東京も好きでした。日本に来てから、まず日本の会社で仕事を見つけました。それは自動車輸出の会社でした。日本車を世界中に輸出している会社でしたが、ただロシアは手つかずだったのです。その市場を開拓するために私は雇われました。ロシア極東は日本に近く、実際、日本車は彼の地の自動車市場で98%のシェアを占めています。私は1年間、自動車ビジネスに携わっていました。
その後、日本在住のイギリス人起業家キャロライン・ポーヴァーさんから「東京で発行されている英語のフリーペーパー『ウィークエンダー・マガジン』の出版権を獲得したから、ウチに来ない?」と誘われました。それで2004年に入社しました。
彼女の会社はキャロライン・ポーヴァー・インクという日本在住外国人女性を支援する会社。”ブロードマインド・ビジネス”という人材紹介事業を運営しています。私は仕事を探していたので、履歴書を送りました。
故郷にある”日本”
私の故郷はロシアの大きな港町ナホトカです。父は船乗りで、よく日本に行っていました。だから子供の頃から、和食などに親しんでいました。「ありがとう」「こんにちは」「どういたしまして」などの日本語も父から教わりました。
またナホトカやウラジオストクにはたくさんの日本人観光客が頻繁に来ていました。彼らは皆、ナホトカからシベリア鉄道に乗っていきました。
私は子どものころ、よくダンスをしました。他のダンサーの子たちとキャンプで過ごしたこともありました。日本人学生も1ヶ月間、リラックスしたり文化交流したりするために合宿しました。私たちは彼らや日本人観光客にロシア舞踊を披露しました。私は子どもの頃から日本人と何らかのつながりがあり、日本の文化が大好きでした。
憧れの国で体験した差別
成田空港に到着後、私はバスで神奈川県に向かいました。高速道路沿いにも木々や茂み、花があちこちにあり、とても幸せな気分になりました。その光景で、私は日本にいたいと思いました。子どもの頃から日本の文化が大好きだったこともあり、嬉しさがこみあげてきました。
しかし就職活動を始めたとき、日本社会と日本の仕事文化について、より深いレベルに踏み込むときが来ました。その時、日本の嫌な面をたくさん見てしまったのです。
その自動車輸出会社は日本人の男性が経営していて、とても保守的でした。他にも外国人の従業員がいたから、国際的であはありましたが、外国人女性は私一人だったので、差別を受けました。外国人ということで差別され、性別による差別も受けた。つまり二重の差別を受けたわけです。だから日本の職場環境はあまり楽しくなかったですね。日本の社会がだいぶ変わってきたとはいえ、差別はいまだに根強く残っているように思います。
だから私は海外での求人を探し始めました。そんな時にキャロラインさんが私を彼女の会社に迎えてくれたのです。彼女が私に新しいポジションをくれたときは本当に嬉しかった。本当に外国人に優しい会社でしたね。
新しい文化、新しい人々、新しい世界
私が日本にいた5年間、いろいろなものに出会い、深堀りし、その文化を楽しみました。でも環境を変えて何か別のことをする必要があると感じ、日本を離れることを考えました。そして最終的に違う国に行き、新たな文化を探っていこうと決めました。
東京と同じようなライフスタイルや生活を送れるのは、ニューヨークしかないと思いました。それがここを選んだ理由です。
ロンドンやモスクワへの移住も考えました。でもロンドンは雨が多すぎます。より良い気候の場所に行きたいと思いました
モスクワもとても大きな街だし、あらゆる文化があります。でもロシアの中だからあまり多様な環境ではないし、他の文化に対してオープンではありません。私は新しい文化に出会いたかった。国籍の違う人たちと出会って、まだ見ぬ世界を探検したいと思いました。
東京は多様性に富んでいますが、限界があります。東京にはたくさんの外国人がいますが、彼らとの出会いは、やがて日常になってしまう。なぜならいつも出会う人が同じで、彼らが何をしているかを知ってしまうからです。だから私には変化が必要でした。東京よりも大きな街、より多くの外国人と出会える場所に行きたいと思いました。
ここニューヨークでは、まだ差別を経験したことはありません。きっとニューヨークに来て日が浅く、まだ複数の会社で働いていないからでしょうね。
ロシアから見るニューヨークと東京
広い野原、美しい森、大自然、親切で寛大な人々がいる – そんなロシアほど、アメリカや日本で”自分”を感じられる場所はありません。アメリカや日本には法律で禁止されていることが多すぎます。これらの国々はとてもきちんとしていますが、人は常に政府から課せられる規則にプレッシャーを感じ、住宅ローンや頭金などの経済的な義務に追われています。ロシアには多くの法律がありますが、人はいつでもそれを回避する方法を見つけるもの。それが良いことだとは言いません。ロシアがアメリカや日本ほど経済的に進んでいない理由がそこにあるのかもしれないし、私が今ロシアに住んでいない理由かもしれませんから。
ロシアはより自由な精神にあふれ、規制が少ない。ただ経済が発展し、国として秩序を持ちつつある今、それは大きく変わってきていると思います。
チャンスあふれるニューヨーク
ニューヨークには良いところがたくさんあります。
まず、ここではあらゆる文化に出会えます。世界中を探検するのが大好きな私にとって、これがニューヨークで一番楽しいところです。いろいろな文化を学ぶのも好きだし、いろいろな料理を食べるのも好き。ここではあらゆる料理に出会えるのです。
またニューヨークには、リトル・コリアやリトル・ジャパン、リトル・ブラジル、チャイナタウン、海岸沿いにあるリトル・ロシア(※ブルックリンのブライトンビーチ)といったエリアがあります。
実際にここで人と会うのは楽しい。ひとつの街で世界中の人々と出会うことができるからです。何が起こるかわからないし、誰と会うかもわからない。ここではたくさんのチャンスをゲットできる。ここでは毎日が驚きなのです。
ニューヨークの”リトル・ロシア”と呼ばれるブライトンビーチ。
ニューヨークの”隔離”
ここの人々は多くの文化に対してオープンで、皆さんに他の人と同じように接してくれます。それは彼らにとって自然なこと。世界中からニューヨークに来て、ニューヨーカーになる。だから他の人と区別されず、混ざり合うのです。
しかしここニューヨークでは、たくさんの”隔離”があることに気づきました。例えばここのロシア人コミュニティでは、人はそのコミュニティでしか出会わない。一緒に出かけたり、一緒にパーティーを開いたりするのは常にロシア人です。同じように、白人は白人とだけ会うし、黒人は黒人とだけ付き合う。一方で、白人と黒人は交流しません。中国人はチャイナタウンに住み、他の民族も特定の地域に固まって住んでいます。たった2ブロック歩くだけで、別のエスニックグループの街に足を踏み入れます。つまり、それほど人々が混ざり合っていないことに気づいたのです。多くの文化があるように感じても、人々は別々に、それぞれのコミュニティで暮らしています。
ニューヨークは外国人にとって心地良い街
日本では、日本人と外国人は完全に分けられています。でもここでは、皆さんが外国人かどうかなんて誰も気にしない。英語の訛りも気にしない。彼らは皆さんを理解してくれます。ニューヨークは外国人にとって、東京よりもずっと快適だと思います。
ニューヨークは眠らない街です。たくさんのことを楽しめますが、独身の人たちのための街のようにも感じます。だからもし私に家族ができたら、もっと自然に近い静かな場所に引っ越したいと思います。でももう2年間はニューヨークにいるつもり。私はニューヨークに残りたいと思っています。
アリーナさんにとって、東京って何ですか?
東京は私にとって大きな挑戦でした。美しい日本文化を教えてくれた街であり、プロになるチャンスをくれた街です。
アリーナさんにとって、ニューヨークって何ですか?
私の次のステップです。
ここには私が欲しかったものが全てあります。ニューヨークにはロシアのものがたくさんあるから、ロシアに行く必要はありません。ここにはアメリカの文化はもちろん、他の文化もあります。
だからここでは、私は日々”探検”で忙しいのです。
アリーナさん関連リンク
Niwaka USA, Inc.:niwaka.com/en-us/
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